28日の日経電子版「八十二銀行と長野銀行が経営統合へ 23年6月めど」のなかに下記の記載があります。
~同一県内の地銀の経営統合を独占禁止法の適用除外とする特例法の認可取得を目指すとみられる。(中略) 地銀同士が統合・合併しても向こう10年間、独禁法の適用除外とするものだ。特定地域の市場占有率が高まっても、地域に欠かせないインフラとして機能を発揮してもらうための時限措置。優位な立場を利用し、貸出金利を引き上げることがないよう金融庁が監視する。
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCC284R70Y2A920C2000000/
太字はワタシによるものですが、この記事の太字のところに違和感を持ちました。
理由を説明します。
独禁法の特例法の認可を受けた地域銀行は認可基準を守らねばなければならないのですが、以下の2つの基準に抵触すると認められた場合、銀行には是正命令が出されます。
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①「合併等により、基盤的サービスに係る事業の改善が見込まれるとともに、その改善に応じ、基盤的サービスの提供の維持が図られること」
②「合併等により、利用者に対して不当な基盤的サービスの価格の上昇その他の不当な不利益を生ずるおそれがあると認められないこと」
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②の典型は日経記事にある通り、「貸出金利の引き上げ」ですが、
不可解なことに、① は往々にして見逃されがちです。今までの合併に関する報道で見たことないし、今回もそうでした。
週刊金融財政事情の2020/7/27号には、特例法の解説記事
「基盤的サービス維持のための地銀に関する独禁法の特例法~県内での貸出シェアが高まる場合にも経営統合が可能に」(佐々木豪、林田尚也両氏による)
がありますが、
https://www.fsa.go.jp/frtc/kikou/2020/20200727.pdf
そこには①の例として、
「地域銀行は、例えば、事業性評価に基づく融資、経営に関する支援、事業再生支援など中小企業向けのサービスの維持・向上等に資する取り組みを実施することが考えられる。」
と書かれています。
まさにコロナ禍のいま求められていることです。
メディア報道から漏れていますが、
改めて、合併によって経営支援・事業再生支援の維持・向上が図られるかどうかが重要との指摘をしておきたいと思います。