9月21日、「金融仲介と事業性評価のあるべき姿」のセミナー 第2回 (主催は金融財政事情研究会、与信管理協会、日本政策金融公庫、ジンテック) に参加しました。
基調講演は本ブログにしばしばコメントを寄せていただいている寺岡雅顕さん。
いつもと同じ明快なお話で、あっという間の90分でした。
「事業性評価、リレバンをしっかりやっているのに成果が上がらない」という某理事長 (信用金庫) のところのディスクロージャー誌には「融資の9割以上が長期資金」と記載されているという話には笑ってしまいました。
評価シート作りが目的化した、資金繰りすら見ていない、なんちゃってリレバンの典型例。日本中至る所で見られるシーンです。
さて、
第2部のパネルディスカッションのパネラーは、寺岡さんと、しののめ信用金庫 (本店群馬県富岡市) の横山理事長、金融庁の日下さん。モデレーターは橋本卓典さんでした。
しののめ信用金庫さんとは今までご縁がなかったのですが、財務内容の良好な「小」が業況の厳しい「大」を飲み込む合併金庫 (2007年1月) ということで、以前から 注目していました。
横山理事長は金庫の理念を「愛」と言われました。
しののめ信用金庫のHPには、
「私たちは、もっとも重視すべき価値、基本理念として人間愛を掲げ、『愛本位主義』と名付けました。つねに慈しみや思いやりを大切にする人間でありたいとする基本的な姿勢を示すものです。一方、経営理念は、この「愛本位主義」を毎日の行動に移していくための実践哲学です。」
とあります。
横山理事長の話の核は、愛本位主義を実践するための役職員教育でしたが、その役割を担ったのが寺岡さんたっだわけです。
「信用金庫の職員は地域からお預かりしている。」
という横山さんの言葉には電流が走りました。
地域金融機関の有形資産は貸出債権や運用有価証券などですが、その有形資産を質量ともに高めることができるのは、ヒューマンアセットという無形資産に他なりません。
パネルの最後にモデレーターの橋本さんから、コメントを求められたので (事前打ち合わせなしです、ハイ、笑)、
「寺岡さんへの研修教育費は金庫にとっては費用であるが、本来は“投資”勘定に計上されるべきもの。役職員が活性化し、モーティベーションが上がり、それが金庫の業績アップにつながれば投資効果あり、ということになる。」
と、感想らしきことを述べました。
収益環境が厳しくて「職員研修費が出せない」と嘯く、情けない地域金融機関が多いのですが、こういう時にこそ、最優先されるべきはヒューマンアセットへの“投資”です。
コメント
とある中小企業の経営者の方から『顧客アンケートをとっても、“安くしろ”“量を増やせ”という回答が大半だが、その中でたまに“感動した、ありがとう”と言って頂けるものがある。そこに注目するんだよ』という話を聞いた事があります。そして『お客様に感動して頂いた従業員はそれに感動を覚える。そしてまたお客様に感動して頂こうと努力し始めるんだよね』と。
旅館業、小売業、金融業、全部同じじゃないでしょうか?少し高かろうが、そこに行くまで面倒だろうが、お客様は喜びを提供してくれるところに喜んでお金を払うのだと思います。
お客様の想いや埋もれた(お客様自身が気付かれていない)ニーズ、そうした事を感じとる事ができる職員を育てなくてはならないですね。
でも金融業界では若手職員の教育方針がまったく違う方向で行われているように感じます。
追伸です。
『安くしろ、量を増やせ』にだけ反応していたら、マズイですね・・・。
まぁ手っ取り早いのは判りますが。
全く同感です。当組も、人件費は費用ではなく、未来への投資として考えています。人への投資なくして、サステナブルな繁栄はあり得ません。経費率が高いとのご指摘を受けるのは困ったものですが…。(笑)ヒューマンキャピタルとコミュニティキャピタルを育ててまいります。
ヒューマンアセットの活性化のための教育費は費用項目ではなく、投資勘定に計上することを考えてみて、と某会計士に言ったのですが、呆然とされてしまいました。
せめて管理会計でそういう仕組みができないものですかね。
金融機関の人材育成の難しさは次の2点で表現できると思っています。
①過去のパラダイムの中で成功体験を持つ方が上位職にいらしゃる、②地域金融に携わるものとして最低限必要な哲学と基本知識が失われている。
解決するには経営トップの強い意志とリーダーシップ、および繰り返し人づくりに取り組む我慢強さがポイントとなります。
金融機関に勤めているとき同じ内容の研修を繰り返し聞くことのできる仕組みを作りました。すると大体3回聞いて卒業していきます。
2回目を聞いた後に聞くと、「1回目でわかったつもりになっていたことに気が付いた」、3回目聞きに来た職員に聞くと「軸を取り戻すために聞きに来た」と答えるのです。
3度目の職員にさらに聞くと、「支店に戻ると正反対のことを求められ自分の立ち位置を見失うときがある。この研修で自分の方向でいいんだ。少なくとも銀行としては間違った方向にはないことが確認できる。明日からもう一度頑張ってみよう・・・という気持ちになれる」ということでした。
「銀行経営者からは現場が変わらない。職員からは経営者や支店長が変わらない」という声が聞こえてきます。いずれのケースもあるとは思いますが、第一に経営トップの覚悟が必要です。第2にパラダイムシフトが現実になろうとしている今、時間をかけていては失敗します。短時間に組織全体の向きを定める工夫が要ります。
しののめ信用金庫では「愛本位主義」をかかげ、「真正面から融資に取り組める金庫を取り戻す」という強い横山理事長のリーダーシップのもと、「金融機関の職員としてのあるべき論と、基礎知識と取り組み姿勢に力点を置いた研修を全階層(役員も含みます)に実施しました。金庫の進む道を明確に示し、そのための研修を社運をかけて取り組むという強いメッセージが発せられました。「若い職員の動きは変わるはずだ。新たな変化の兆しの芽を摘むことだけはしないで欲しい。ついてはどのような内容の研修を行うかについて一度聞いておいて欲しい」というものです。特に財務は会計的視点ではなくファイナンスの視点でとらえる必要性を訴えました。
1年で大きく金庫は意識の上で変わり始めていると思います。基礎知識の面は拙書にリンクさせてあるため、3度目は自分で学習できる体制が出来上がりました。
今年は現場力の向上です。ここは別に適任者にお願いしています。
日曜日=鉄ネタ、の刷り込みがあるからか本日のタイトル、、、コンマ何秒かの間「愛本」と読んでしまいましたよ。
富山地方鉄道に愛本という駅があります。昔、ここに降り立ったことあるので何でまた富山地鉄なの?と早トチリした次第。
実は愛本駅には何の関心もないのですが隣駅にゼヒとも行ってみたかったので。愛本は確か急行停車駅で、そこから目的地まで乗換えたのか歩いたのかも覚えてませんが。
むりやり鉄ネタにしたった、ムフフ。