「経営理念」発の一気通貫

「コンプライアンス面での過失には反論の余地がないが、ビジネスモデルや有価証券の運用方針については見解の相違で徹底的に議論した。」

以前、金融庁のモニタリングを受けた某地域金融機関の幹部 X さんと話の中で出てきたフレーズです。

確かに、ビジネスモデルは各金融機関が独自に考えるべきもので、それに対して行政がとやかくいうのはおかしな話です。実際、1990年代のバブル華やかなりし時代に、金融庁検査や日銀考査で、「他行がリゾート開発資金を出しているのに、なぜやらないのだ」と言われた地域金融機関がありました。余計なお世話です。

ただビジネスモデルが経営理念と乖離しているようだと問題です。

経営理念を出発点として、これと整合的する経営戦略・経営計画が策定され、現場の行動を動かす仕組み(業績評価、人事制度、コンプライアンスなど) が一気通貫になっていないのであれば、そこを検査で突かれた場合、どのように反論するでしょうか?

《「金融機関トップと話すと経営理念は早々に打ち切り、すぐに経営戦略の話に移ろうとするんだ」と、遠藤は苦言を呈する。銀行、証券、保険会社の経営者は心した方がいい。金融庁との「対話」で、戦略の巧みさ以上に、理念と行動の整合性を確かめにくるだろう。》

橋本卓典さんの7月29日の現代ビジネスオンライン、「金融機関は脱ノルマへ!? 遠藤金融庁2期目の『新方針』を明かそう」にも、このことが明快に書かれています。

Xさん、大丈夫ですか?

 

 

 

 

 

 

 

 


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コメント

  1. 橋本卓典 より:

    地域の事情は様々なので、ビジネスモデルの画一的押しつけは、迷惑至極で、「地域の元気」につながらないことを行政機関はするべきではありません。多胡さんの「余計なお世話」、その通りです。

    他方、金融機関が自ら掲げた理念と相反する戦略と実践を展開しているのならば、経営の大いなる矛盾があります。

    高すぎる給与を穴埋めんが為に、よからぬ金融商品をノルマで売りまくる先例は数えきれません。

    銀行法1条(信金信組も)に違反していませんか?という根本問題だからこそ、金融庁には点検が求められるということです。何を質問するのか、と同時に何を質問しないのかも重要です。監督権限のある者が質問した瞬間、化学反応が起きてしまいます。最優先課題となり、「地域の元気」がなし崩しになるのを何度も目にしてきました。

    できれば、他人に言われるまでもなく金融機関には自覚症状があってほしいものです。よって、理念と実践の「逸脱」を口にできる社内の心理的安全が求められるのです。「逸脱」よりも「社内政治」が優先されると、後々とんでもない事態を招きます。

  2. 東北の銀行員 より:

    「経営理念」は企業の存在意義であり、平たく言えば「何を目的に存在するのか」ということです。

    そしてその「目的」を叶える為に、経営戦略があり戦術があり最後に結果として収益に繋がる。これが一気通貫であると思います。

    どの金融機関の経営理念を見ても、言葉は違えども素晴らしい目的を持っています。

    しかし業績評価に目を向けると業績評価項目が預り資産やビジネスマッチング手数料額そのものだったりと疑問を感じるケースが多々あります。これでは経営理念から業績評価への繋がりが飛躍しすぎているように思いますが…。

    企業として存続する「目的」が収益そのものであれば業績評価は手数料達成額(率)で良いと思いますが、その場合は「例え地域が疲弊しても存続する強い企業を目指す」を経営理念にするべきでしょうね。

  3. 森脇ゆき より:

    金融機関勤務時代、素晴らしい経営理念が好きで、私なりの小さな誇りを持ち働いていたので、実情との乖離に相当苦しみました。

    現在独立して様々な方とお目にかかりますが、ビジネスの話ではなく、その方個人の理念をお聞きするのがとても勉強になります。

    たまにスーっといなくなってしまう方もいて残念ですが。

    今後経営理念コンサルタントのようなお仕事の方が出てこないことを願います。

    まさかとは思いますが、経営理念検査マニュアルなども困ります。

  4. ミザール より:

    29.7.26の日経「経済気象台」で削氏が、会社経営の究極の目的を、「働いている社員が充実した人生を過ごすことで、幸せを感じ、お客様や地域社会に貢献すること」と述べていたことに素直に共感しました。今現状の経営者を見るとまず数字が第一の方がほとんどである。それだけ余裕がない環境にあると感じるが、経営を分かっていない人が多いのではないか。小宮一慶さんが、経営の3要素として①企業の方向付け②資源の最適配分③人を動かすことと、端的に述べています。当局の指導基準にしていただきたいとこの頃特に思います。

    そして大矢昌弘さんは、経営のプロは兵站(ロジステック)を語り、素人は戦略を語ると述べています。「何が競争の勝敗を左右しているのか、従来より広い視野から分析し、自社のサプライチェーンを強化すると同時に相手の弱点を突く」正に経営です。

  5. 平 祥志 より:

    行員・職員の多くは、経営理念はお飾り過ぎないと考えている。

    さらに、ビジネスモデルという言葉がもてはやされる中で、それを明確に描けている金融機関は少ない。経営者の中には、「お金を集めて、貸出すことがビジネスモデルだ」という方もいる。そのような方は、そもそもビジネスモデルが何かを自分の中に定義できていない。

    「経営理念を、どのようにして日々の仕事の中に具体的かつ実践的に落とし込むか」、それを探求することが、ビジネスモデルの発見につながるのではないか。