このブログで再三書いていますが、オーバーバンキングだから再編、大きくなれば銀行の基盤が安定するから再編すべきだという意見には、現実を直視するものではなく同意できません。
そもそも地域金融機関の規模拡大のメリットはシェアードサービスでほとんどのことが享受できるわけで、地域の顧客のため、地域活性化のためにに使うべき資本は安易に他の金融機関の資本と合算すべきものではありません。それに合併に伴うコストや機会費用(従業員のモラルダウンも含め)の大きさは決して無視できるものではありません。
オーバーバンキングについては、TKC坂本孝司全国会会長と6月に対談した際、意見を述べました。
「まずお話ししておきたいことは、現在の地域金融に関する誤った認識の一つとして「日本はオーバーバンキングである」というものです。一部のメディアや有識者がよく発言していますが、これはまったくの見当違いです。単純な人口当たりの金融機関数の比較を見ても、例えばアメリカの人口約3億3000万人に対し金融機関は1万強、ドイツの人口約8300万人に対して金融機関は1500余と、いずれも日本の人口(約1億2600万人)当たりの金融機関数(500余/地域金融機関)を上回っています。ではなぜオーバーバンキングといわれるかというと、各地域にはそれぞれの歴史や文化・社会、産業があるにもかかわらず、地域金融機関のビジネスモデルが画一的で、同じようなことしかしていない。それだったら地域社会や事業者からすれば「そんなに数はいらないだろう」となるわけです。本来は地域の特徴に合わせた多種多様なサービスをして差別化を図るべきであり、つまりはオーバーバンキングとの誤解の原因は経営にあるのです。むしろ、地域によっては金融機関の数は足りていません。例えば、信用金庫や信用組合は地域の小規模事業者への毛細血管のような資金供給を担うコミュニティバンクなのですが、全国を見渡すとこれらが消滅した空白地区がかなりあります。こうした現状があるにもかかわらず「日本はオーバーバンキング」というのはナンセンスです。」(対談録「リレバン金融機関と税理士が総力戦で中小企業支援に取り組む!」より)
こういう趣旨から、
昨日の全国地方銀行協会の大矢会長の発言にエールを送ります。
~「従来型の預貸を中心とした銀行業務については(銀行数が多すぎる)オーバーバンキングだろう」。全国地方銀行協会の大矢恭好会長(横浜銀行頭取)は16日の記者会見で、菅氏の訴える地銀再編についてコメントした。再編だけが解決策ではないとしながらも「事業構造をどう変えるかスピード感を持って取り組むべきだ」と危機感を示した。(日経新聞、9/17)