まずは、2019年6月13日の金融庁/政策評価に関する有識者会議の議事録から。
https://www.fsa.go.jp/seisaku/gijiroku/20190613gijiroku.pdf
~金融システムの安定と金融仲介機能という、この2つのバランスをいかにとっていくかというのが行政の一番ポイントだと思うんですが、その中でも特に、仮に金融仲介機能を横軸ととると、金融包摂ですとか、事業性評価とか、事業再生とか、こういうキーワードがあるわけですね。縦軸は安定的収益とか、その確保に基づく健全性、金融システムの安定性です。この縦と横の関係で捉えますと、横軸をしっかりさせて結果として縦軸がきちんと達成できるというところが重要であると思っております。どうしても縦軸が強く出過ぎると、場合によっては金融排除が起こるといったような本末転倒になりかねないというところは常々気になるところであります。縦軸のところというのは、これはファクトということで数字である程度捉えることができるんですが、横軸の金融仲介のところはなかなかファクトとして捉えにくく数値で見てどうこうするというのは容易ではなく、かつ、フォワードルッキングということで、将来の絵を描いていかなければならないわけですね。 そこをどうやって見つけていくか、切り込んでいくかの手法が深度ある対話で、今回、この評価書の中にも出てくるキーワードなんですが、深度ある対話がないと切り込めないというところ大事だと思っています。(7ページより抜粋、太字は多胡による)
地域金融行政における「縦軸と横軸」の問題は、2003年のリレバンのあり方検討会議以来、常に最重要な論点となっていました。
「縦軸」は金融機関の健全性、金融システムの安定であり、一方「横軸」は金融仲介機能の強化、金融円滑化、金融包摂であり、事業変革/事業再生の支援も横軸に内包されます。
「横軸」においては時間軸、中長期的視点が不可欠であり、昨今のSDGsの流れは横軸重視に他なりません。
文中にもある通り「縦軸」は計数が容易に把握できることから、過去には金融機関の経営も金融行政も「縦軸」への過度な傾斜があったことは否めませんでしたが、あくまでも「横軸ありきの縦軸」というのが正解です。
かつて「横軸」の主たるリスクは「信用リスク」でしたが、企業経営者の高齢化が進行する中でのコロナ禍により、横軸リスクに地元事業者の「廃業」急増という恐ろしいリスク、地域金融機関の基盤を崩壊させてしまうリスクが加わったのです。(廃業の多くは黒字廃業であることは周知の通りです)
地域金融機関は地元事業者の廃業リスクに全力で立ち向かわねばなりません。事業承継に取り組んでいると称し、手数料目当てで専門業者に丸投げしている場合ではないのです。
金融システムの安定といいますが、いまは地域経済・地域社会の崩壊を止めることの方が優先度は高いのです。このことに異論を挟む人はいないでしょう。
そういう意味からも、行政サイドは金融システム安定化にこだわるあまり、横軸軽視で顧客本位を忘れたレイジーバンクを甘やかしてはいけません。