本日(こちらの時間では、まだ28日です)は、バンコクの事業者や金融機関などを回りました。
日本からの海外進出の受け入れ拠点として長い歴史があるせいか、製造業については当地において産業集積が相当にできあがっていると感じました。長い歴史の中で日本からの進出企業だけでなく、そこからの技術移転が進み、地場企業もそれなりの力をつけてきて、サプライチェーンの中に組み込まれるようになってきています。
またサービス業、たとえば飲食業に関しても、すでに和食屋が1600軒とのことで、ある意味、飽和状態となっており、新規参入と撤退とが入り交じる局面となっています。
そもそもタイは東南アジア屈指の農業国であり、リンゴや梨などの一部の農産物を除けば、日本で収穫される農産物の多くは当地において、すでに生産されているのです。当地における農業生産技術も向上し、日本からの輸入への依存度は決して高くないように思います。
このような中で、昨今の中国との緊張関係の激化などもあり、東南アジアへの中小零細企業の進出打診、農産物などの東南アジアへの輸出打診が急増しているようです。
「各都道府県庁からのバンコック詣が、はやり病のように流行」と揶揄されるぐらいだそうです。
すでにビジネスの流れができあがっているといるところに、割って入るわけですから、部品(製造業)にしても、食品にしても、納入先に対し、既存勢力との違いを十分に納得させるだけのものがないと話になりません。要すれば、中途半端ではない競争力(価格面、非価格面を問わず)が求められるということです。
本日、お目にかかった人たちとの話から察するに、最近、進出を決断して来る中小零細企業の中で、この現状を十分に認識しているところは、あまり多くないようです。
この点を日本国内で事前に説明して、安易な判断を下すのではなく、海外展開することの是非につき、十分な検討を促すことが、国内における取引金融機関の重要な役割であると思います。
ところが、実際は「取引先が東南アジアに進出といっているので、それを手伝う」、「食品関係の取引先が品物を東南アジアに出したいから、それを手伝う」、「そのために東南アジアに駐在員を派遣する」という"完全に受け身"の金融機関が多いのが気になるところです。
事業経営を行うのは中小零細企業であり、金融機関ではありません。しかしながら海外という未知の世界に出て行こうとする中小零細企業にとって、その是非の判断基準を提供する「転ばぬ先の杖」は絶対に必要です。地域金融機関には「転ばぬ先の杖」であるとの自覚を持ってもらいたいものです。