先週、某地方銀行の支店長会議で話をしてきました。
「サクラの質問はお断りしますが、何かあればどうぞ‼︎」
終了後に質問を受けたところ、定番のものが出てきました。
現場の業績評価について、「成果指標ではなく、プロセス指標をどう考えるか」というものです。
私の答えは最後に書いてあります。
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さて、成果指標というのは、融資ボリューム、投信保険の売り上げ、金利収入、新規取引先数などであり、これらは銀行の損益そのものにダイレクトにつながることから、現場を評価する上で非常に分かりやすいものです。ほとんどの地域金融機関の目標設定はこれです。
ただ、この成果が果たして顧客の本来のニーズに基づくものか、優越的地位の濫用など金融機関側の独りよがりのものか (顧客の不満を内包したものか)、常に議論になるところです。
顧客本位を前提とした成果かどうかを判定する上で、結果につながるまでのプロセスをしっかりと見て、そこを評価目標に組み入れようというのがプロセス評価です。
プロセス指標でよく使われるのは、顧客訪問件数、提案件数、顧客アンケートなどです。
プロセス評価を否定するつもりはありませんが特効薬にはなりません。
プロセス指標であっても完全なものはなく必ず穴があります。指標の盲点を突いて数字だけを巧みに作り上げる小賢しい現場の行動に歯止めをかけることはできません。
昨今、いくつかの地域金融機関の中にはボリューム中心の成果指標を廃止したところがありますが、これらの金融機関では成果指標の典型ともいえる貸出金利の低下に歯止めがかかっています。
その要因は成果指標をプロセス指標に切り替えたことだけではありません。
ボリューム目標廃止によって、現場の若手を中心に息を吹き返している一方、与えられたノルマをこなすだけのプロダクトアウト支店長は茫然自失状態であるとの話も聞こえてきます。
やるべきことはプロセス評価の整備以上に、現場の司令官である支店長の選別、育成ではないでしょうか。
顧客本位のビジネスモデルのプリンシプルが腹に落ちておらず、ヒューマン・アセット・マネジメントのできない人間を支店長に登用してはいけないということです。
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「プロセス評価を試行錯誤するのは悪いことではありませんが、それ以上に支店長の人事と育成がポイントです。これは業績評価を作る営業本部の仕事ではなく、経営のやるべきことです。貸出や有価証券の運用資産以上に、人的資産を精査し活用することです。」
コメント
某信用金庫で実験しています。
1年に渡り当該信金の全階層に対し、融資の基礎研修を行っています。「地に足のついた融資への取り組みが、地域との共通価値を生み出す基礎にある」という理事長の方針に基づく取り組みです。4月に、全8階層に分けて、役員・部長・支店長階層から研修をスタートさせました。
「自分たちの成功体験は美しく、それはそれで大切にしてもらえばいいが、若い諸君の純粋な思いとそこから生まれる動きを、潰すことだけはしてほしくはない」という思いからです。
取組の成果などは、明日お目にかかった時にお話ししたいと思います。
寺岡さま
ありがとうございます。
役員、本部部長、支店長からの研修というのが凄いです。一気通貫の研修で組織的継続的な運動になりますね。決断したトップは立派だと思います。
明日、お話しをうかがえること、楽しみにしております。