明日12月1日に「商工中金あり方会議」の第2回目が開催されます。
メディアの人によれば、11月17日の第1回と同様に満員御礼?で傍聴券は抽選だそうです。
新聞等の報道にもある通り、前回は世耕経済産業大臣の冒頭の挨拶「聖域なく、ゼロベースで議論をしてもらいたい」を踏まえ、ギア発信ではなく、いきなりトップスピードでの議論となりました。
問題提起の内容は商工中金だけにとどまらず、政府系金融機関に関するところにも広がりました。
第1回会議の翌日11/18の日経新聞は下記の記事を掲載しています。
「政府系金融機関が地方銀行の業務を圧迫した問題事例のうち、日本政策金融公庫による案件が全体の6割を占めることが17日、明らかになった。全国地方銀行協会が会員64行に実施したアンケートで判明した。商工組合中央金庫(商工中金)で発覚した不正融資案件と同じく、有利な条件を示して取引先を奪われたなどの事例が全部で424件報告されたという。問題事例のうち61%を日本公庫、26%を商工中金が占めた。」(抜粋)
商工中金以上に日本政策金融公庫の民業圧迫の事例が多いとの地方銀行協会のアンケート結果です。
日本政策金融公庫は、かつての国民生活金融公庫(→ 国民生活事業本部)、中小企業金融公庫(→ 中小企業事業本部)、農林漁業金融公庫(→ 農林水産事業本部)が、行革によって統合された経緯があります。(→)は統合後の姿。
私も地域金融の現場からの声を聞くのですが、国民生活事業と農林水産事業に対する問題の指摘はまったくと言ってよいほど聞いたことがありません。
すべて中小企業事業です。
かつて統合をめぐる内閣府での政策金融改革ワーキングチーム (2007-2008) に参画した際には、当時の中小企業金融公庫の事業活動に納得できないことが多く、ワーキングチームで厳しく指摘したことを思い出します。
そういう経緯があったにもかかわらず、日本政策金融公庫の中小企業事業がいまだに商工中金を上回るような民業圧迫を行なっていることに愕然としました。
日本政策金融公庫の中小企業事業は長期資金一本で、商工中金のように長短併用のフルバンキングではなく、商工中金のように「ミドルリスク層の融資 (途上管理は必須であり、長期資金だけではモニタリングできない)」や「企業再生」による民業補完という選択肢はありません。
振り返ってみると、中小企業金融公庫が創設された頃は恒常的に資金が逼迫しており、とくに長期資金の希少性が高く、中小企業は長期資金調達に苦慮していました。ところが金利スワップが普及するとともに都市銀行でも地銀や信金でも長期資金ポジションを作れるようになり、長期資金の希少性は完全消滅しています。
かつて企業の設備資金を支えた3つの長期信用銀行は今や存在しません。
にもかかわらず政府系では長期資金だけの部門が中小企業事業の名のもとで存在していることには違和感を感じざるを得ません。
さらに長期の信用リスクの補完は信用保証制度によって十分にカバーされます。
中小企業事業の存在理由はどこにあるのでしょうか。
本日の日経新聞に囲み記事があります。以下抜粋です。
全国地方銀行協会の調べで日本政策金融公庫による低利融資が地銀を圧迫しているとの批判が出ていることについて、日本公庫の皆川博美副総裁は29日記者会見し「ガバナンスや職員の教育を含めて(民業圧迫は)ない」との認識を示した。皆川氏は22日に地銀協から調査結果を受け取ったことを明らかにし「過去に地銀協から出た案件で事実関係を調べた限り不適切な事例はなかったと記憶している」と強調。会見を予定していた細川興一総裁は欠席した。
ちなみに、会見した副理事長は農林漁業金融公庫 (民業圧迫はない) の出身です。
「不適切な事例はなかったと記憶している」という表現、最近流行っているようですね。
いやはや。