長崎で再アンケート

新聞報道によれば、公正取引委員会が、ふくおかフィナンシャルグループ(FFG)と十八銀行による経営統合に関し、長崎県内の企業を対象に改めてアンケート調査を実施するのだそうです。

2年前の再調査になるのですが、あの時と比べると事業者の方は、「合併で強い銀行ができることは良いこと」といった情緒的ではなく、現実的で冷静になっているものと感じられます。

このアンケートですが、十八銀行がFFGと合併しようがしまいが、県外も含めどこの金融機関からも借りられるような事業者 (Aゾーン) から意見を集めてもあまり意味がなく、日本型金融排除の対象となりかねない事業者(Bゾーン) の意見を吸い上げることが重要です。これこそが競争政策のポイントです。

前回の3000社アンケートの対象がどのゾーンだったのかは定かではありませんが、今回はBゾーンに集中してもらいたいところです。

長崎の場合には新潟と違って「県外資本となる」ことが、Bゾーンに大きな影響を与えるところだと思います。「新潟の合併が決まったから長崎も」というのは違います。前提条件が異なるので比較対象になりません。

最近は長崎の事業者の人から「合併後の親会社となるFFGは外国人株主のシェアが高く、従来の十八銀行株主の影響力がなくなるのは必定。そうなると長崎県内の業況の悪い企業や過疎地への金融サービスの質の低下が心配」との意見がしばしば聞かれるようになりました。よく分かります。

このポイントは2年前に事業者からは聞こえてこなかったことです。失礼ながら事業者の方たちの金融リテラシーが向上したということでしょう。

公取委のある幹部は「現状を把握する限り、取引企業の状況は前回調査と変わらない。結果が変わらねば、引導を渡す形になる」と語った (2/9 産経ニュース)

とのことですが、どのような展開になるのやら。

すべては長崎の事業者にかかっています。

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コメント

  1. ハローン君 より:

    「地元資本」という意味が分かりません。

    十八銀行の株主のうち、長崎県内の株主は25%しかいません。

    https://www.18bank.co.jp/aboutus/investor/kabushiki/kabushiki201709.html

    そもそも、上場企業に対して、株主が県外だから駄目だとか、外国人だから駄目だとか言うのはおかしいと思います。

  2. 旅芸人 より:

    コメント、ありがとうございます。

    たしかに「A層はしっかりB層は選別」という姿勢の地域銀行であれば、株主が地元であろうが、県外であろうが、外人であろうが関係ありません。

    かつて福岡県に住んでいたことがあり、同地の事業者に多くの知己がいますが、彼らの意見を聞くまでもなく、FFGの経営姿勢は「A層はしっかりB層は選別」です。FFGの株主もこの姿勢を評価していると考えられます。

    言うまでもありませんが、福岡県には他に地銀、第二地銀、信金、信組があり、B層はそういう金融機関によってカバーされています。Tier分けができますね。

    FFG傘下に入る前の親和銀行は、A層のみならずB層への面倒見が良かった (十八の方がドライ) のですが、不十分なリスク管理とガバナンスの欠如で苦境に陥りました。

    FFGは「A層はしっかりB層は選別」で10年がかりで親和銀行を再生したのですが、そこで費やした多額の与信費用やなかなか償却できなかった「のれん代」 (前期決算で償却)を考えれば、十八銀行を傘下に入れることで1000億円超の「負ののれん代」(十八銀行のPBRが低いため) を特別利益に組入れようと考えるのは当然の行動だと思います。私がFFGの経営者だったら同じことを考えます。そういう意味でFFGは首尾一貫していますね。

    一方、長崎ではB層をカバーする金融機関が少なく、かなりの部分を十八銀行に依存するしかありません。十八銀行の株主は、意識のあるなしは別にして、そのことを与件としています。

    十八銀行がFFG傘下に入ることで、FFGにおける十八銀行の旧株主の影響力が希薄化することは否定できず、結果として長崎県のB層へのコミットメントが、合併前よりも弱くなることは十分に予想されるのです。

  3. ハローン君 より:

    ご返信ありがとうございました。

    私の見た所、十八銀行と親和銀行の融資姿勢はともに「A層はしっかりB層は選別」であり、

    両行が合併する、しないに関わらず、

    現状のままでは、B層に対する「金融排除」は継続すると思われます。

    このまま二行の競争が続くとしても、

    A層に対する金利のダンピングになるだけだと思います。

    「二行の合併によって資本を強化し、

    今まで手薄だった県内のB層への支援を充実させる」という説明は、

    私には説得力があるように聞こえるのですが、

    どうでしょうか?

  4. 旅芸人 より:

    ハローン君さま、

    コメント、ありがとうございます。

    おっしゃる通り「二行の合併によって資本を強化し、今まで手薄だった県内のB層への支援を充実させる」ことは正論です。

    実際、十八銀行、親和銀行がチキンレースをやっている現状は愚の骨頂であり、合併して一つになって資本充実の上、長崎の過疎地へのコミットメントや長崎のB層の金融仲介、経営改善、事業再生をしっかりとやってほしいものです。これこそがトップ地銀の証です。

    ただ、それをやるにはFFG資本では難しいと思います。FFGの株主は十八親和の合併で捻出されたリソースを、長崎の過疎地やミドルリスク層に注ぎ込むこと以上に、ビジネスチャンスもあり高収益の可能性もあると考える福岡地区に投入することを求めるでしょう。人的余力は長崎の離島や過疎地で使うことよりも、福岡で使うことを求めるでしょうし、余剰人員ならばリストラしろというプレッシャーがかかるかもしれません。これらの点には見解の相違はあるでしょうが、私はこのように思います。

    私の考えるベストソリューションは、十八銀行が金融機能強化法の公的資金を導入して (買収資金が必要でしょうから)、FFGから親和銀行を買い取るというものです。地元資本で長崎の顧客本位の持続可能な強い合併銀行を作ることです。FFGは親和銀行がらみで多額のコストを払っているので相当のプレミアムを覚悟しなければなりませんが。

  5. ハローン君 より:

    多胡様

    たびたびの質問に丁寧なご回答をいただき、ありがとうございます。

    ご意見の趣旨は理解できましたが、金融機関同士の過当競争をなくすために、公的資金を利用するというのは、納税者として、賛同できません。

    経済原則にのっとり、民間の資金が活用できるものについては、あくまで民間で対応すべきだというのが、私の考えです。

    公正取引委員会は、融資シェアだけに着目せず、金融仲介機能の発揮に資する健全な競争とは何かという本質的な観点から、金融機関の結合審査を行ってほしいものですね。

    また、地方経済の再生のためには、産業競争力強化法のような立法措置によって、地域金融機関同士の連携を後押しすることも必要だと思います。

    地域経済の活性化のため、今後も積極的な発信をされることを期待しています。