金融機関が保有不動産の活用の観点から不動産仲介業務をおこなうことの可否、規制緩和の議論が熱を帯びています。
かつて葬祭事業に参入しようと真剣に検討した (行政に打診した?) 協同組織金融機関があったという都市伝説まがいの話もあります。農協が葬祭事業を取り扱えて、同じ協同組合組織なのに我々はなんでできないの、といった論点だったようです。
地域金融機関が他業に参入する規制緩和ですが、それは率直に言えば、地元の他業種の商売の機会を収奪することに他なりません。
金融機関の建物中に美味しい食堂や喫茶店があると従業員が外に出なくなり、近隣の飲食店が潰れるということも聞きます。
公共施設である某区役所の展望付きの食堂が美味しくて外からたくさんの人がくるという話は、民業圧迫としか思えません。
某温泉地の有名旅館が遊興施設などをすべて内製化したため、温泉街の遊興施設が閑古鳥になって困ったという話も同じです。
その一方で、昨年11月14日、このブログにも書きましたが小松市にあるコマツの研修所内には宿泊も食事の設備もなく、研修に来た人間は周辺のホテルや飲食店や地元のケイタリングサービスを利用するとのことです。地元事業者との共通価値の創造(creating shared value)ですね。
規制緩和を求め、他業種の事業を内製化する前にやるべきことがあると思います。
2003年6月、金融庁は預金取扱い金融機関のガイドラインの変更で実質的な規制緩和を行なっています。これはかなりの踏み込みです。
「金融機関がリレーションシップバンキングの機能の一環として行うコンサルティング業務等取引先への支援業務が付随業務に該当することを明確化するとともに、その際、中小企業等顧客保護や法令等遵守の観点から図るべき態勢整備の内容を規定した。」
このガイドライン変更があるからこそ、金融機関はコンサルティングなどの本業支援が行えるようになり、南日本銀行 (鹿児島) や豊和銀行 (大分) のように取引先の商品やサービスの販路拡大の支援ができるのです。
ただ、ほとんどの地域金融機関は片手間でしか、このような活動を行なっておらず、それでいて他業種への参入に関わる規制緩和を求めることには正直なところ違和感を感じます。
「共通価値の創造」よりも「内製化」に目が行くようでは、顧客本位の金融機関ではなく、自己中心の金融機関と後ろ指をさされても文句は言えません。
私は規制緩和を否定するつもりはありませんが、その前にやること、やれることがあると言いたいのです。