商工中金の新社長就任で、同金庫の新しい航海に関する議論が、改めてヒートアップしています。
「経済産業省が設置した有識者による商工中金の在り方検討会は、1月に発表した中間報告で、銀行が貸しにくいミドルリスクの中小企業への融資業務に注力すべきだとした。いわば本業回帰を求める内容だが、中堅幹部からは『今や健全先との取引なくしてうちのビジネスは成り立たないのに』と戸惑う声が漏れる。」(日本経済新聞 3月30日)
実際、商工中金の内部からの声として、「ミドル層に取り組めと検討会議から押しつけられたが、不良債権の予備軍をつかまされるのは御免だ。」といった恨み節も耳に入ってきます。とんでもない曲解です。
商工中金の在り方検討会議で「ミドル層をやるべし」と断言したワタシとしては聞き捨てなりません。
たしかにミドル層という言葉を使ったことが、誤解を招いていることを否定しません。
逐語議事録にも書かれていますが、ワタシは検討会議の最終回 (1月11日) に「ミドルリスク層という言い方は誤解を招きかねず、日本型金融排除となっている層とすべきだった」と反省を込めて補足説明をしました。
周知の通り、本来であれば、また従来であれば、金融排除されない (されなかった) ような中小企業等が資金調達に苦慮していることはまぎれもない事実です。その一方で、誰が見てもピカピカの優良企業などには多くの金融機関が雲霞のごとくアプローチし、超低金利競争で泥沼状態となっています。
原因は、地域金融機関等のレイジーバンク化と、収益面で劣位にある中小企業取引に抑制的なメガバンクの姿勢にあります。
こういう層への資金仲介に真摯に取り組んでいる地域金融機関はないわけではないのですが、こういう金融機関によれば「これらの層のPD値 (倒産確率) は微々たるレベル」とのことです。その通りだと思います。
昨今、この金融排除層は増大傾向にあり(史上最大ではないか!)、ブルーオーシャン状態として放置されていることは間違いありません。
商工中金には、このブルーオーシャンに船出し、日本型金融排除の撲滅の旗頭となってもらいたいのです。
「不良債権の塊をつかまされる」との非難の声の裏には、補助金に支えられた危機対応資金業務への“歪んだノスタルジー”が見え隠れします。レイジーバンカーの戯言です。
このような詭弁を弄するヒトたちとは徹底的に議論をしたいものです。
コメント
デイビット・アトキンソン氏の「新・生産性立国論」を読みました。
日本人の多くがもやもや感じていた日本の経営者の「無能さ」を見事に述べています。
生産性を上げることなく、人件費と経費を下げることにより利益を確保して、経営努力をした結果と対面保つ日本の経営者です。
現在の金融機関経営者も同じです。
人口減少・企業廃業・日銀のマイナス金利政策とこの厳しい金融環境の中、当局は「預貸率低い地域金融機関は地域貢献できていない存在価値がない金融機関」また「コア業務純益出せない金融機関は存続放棄の金融機関」との言を金融機関経営の基準・指針と捉え、預貸率上げるべく大口不動産案件に安く融資を行い、貸出とばかりに預金集めに精を出さず、形ばかりの企業支援・地域活性企画行事を行う。そして貸出残高増加も利回り低下で利息収入減少傾向の中、支払利息・物件費・人件費の削減によりコア業務純益をどうにか確保し、地域金融機関役員としての対面を保つ姿は、デイビット氏の述べる「無能経営者」と同じす。
日本の企業はことごとく役所組織になっているんですね。
長川さま、
コメントありがとうございます。
全く同感です。
経営の自主性と格好をつける割に、金融庁からルールを提示してもらわないと(例を出してくれ、よそはやっているかが口癖)何もできない人が多いですね。金融庁はこれからはプリンスプルベースと言っていますが、ついていけない金融機関経営者だらけですね。