赤字でもやらねばならない業務

「多胡さんは預かり資産業務が嫌いですか?」

いつも地域金融機関の証券商品や保険商品の販売姿勢に対し、厳しいコメントを発するせいか、このような質問をよく受けます

「別に嫌いじゃありません。20代〜30代にかけて、(銀行員でありながら) ずっと証券業務をやらされていたので、他の銀行員よりもはるかに土地勘があります。また保険会社の社員総代やお客さまサービス改善のための委員もやり、保険業界についても知らないわけではありません。」

このように答えると、

「貯蓄から投資の時代。証券や保険商品を地域金融機関が取り扱うことを否定するのはおかしいじゃないですか。」

と反駁されます。

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否定しているわけではありません‼️

お客さまのニーズの有無にかかわらず過大なノルマを張って、売ろうとするから、「ノー」を出しているのです。

証券も保険もお客さまの将来の生活設計のためには必要不可欠なものであり、地域金融機関としては品揃えをして、お客さまの要望にきちんと応える必要があります。現場は当然ながら商品の内容やリスクの所在などをお客さまに説明できなければなりません。

驚く人が多いのですが、地域金融機関の “真っ当な” 預かり資産業務は、それだけを単体で見れば間違いなく赤字です。

儲かっていません。(フィデューシャリーデューティーの観点から問題のある商品を取り扱う場合には、そうでもないかもしれませんが)

からくりはシンプルです。

表に出てくる投信や保険などの販売手数料の収入額にばかりに目が向くのですが、そのために費やした人件費 (販売時のみならず、その後のフォローアップ、クレーム処理も) はどんぶり勘定で、実際にかかったコストが見えていないだけです。

これが多くの地域金融機関の管理会計 (というほどのものでもありませんが) の実態です。

経費のところを分解してみれば、預かり資産業務での手数料収入が吹っ飛ぶようなコストの かかっている地域金融機関がほとんどだと思います。

大口の取引であれば手数料収入額も大きいのですが、ほとんどの地域金融機関の取引ロットではコストをカバーできるような手数料は期待できません。

これが実状なのに、赤字業務にノルマを張って、しゃにむに現場の尻を叩くというのは、「どういう神経なのか」と呆れてしまいます。

そんなことをやっているから一番大事な資産である人材が崩壊するのです。地獄に向かって突き進んでいるようです。

➡︎「たとえコスト (リスクも) に見合わなくても、お客さまのニーズがある以上は、証券業務や保険業務を行う」

預かり資産業務はこのように考えるべきです。

地域金融機関には、地域のお客様のために赤字であろうが真摯に取り組まねばならない業務があり、預かり資産業務はその範疇に入るものです。


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コメント

  1. ミザール より:

    先生のおっしゃる通りです。

    保険にしろ・投信にしろ、元売りの業者が楽して売り上げを立てたいがために、手数料収入を餌にして、金融機関の職員を運動員として利用して、売り上げを立てるという、汚いやり方です。1・2年はある程度の手数料が上がってもその後は減少し手数料は限りなくゼロに収束されます。金融機関は業者のためにただ働きし、付き合いで契約したお客さんはバカを見るだけです。

    ところで貯蓄から投資といわれますが、現状貯蓄ゼロの世帯が3割以上というのは社会的大きな問題です。金融機関の使命として、こうした人々の自己資本充実化への働きかけに真剣に取組む必要があります。