リレバンの議論が始まってまだ間もない頃、中小企業白書 (2005年) に記載されていた、日米の中小小規模企業の取引金融機関数の比較は非常にインパクトがありました。
なんと米国の中小小規模企業の8割強が一行取引なのです。従業員20〜99人のゾーンだと一行取引の企業は9割を超えます。
それに対して日本の場合には、従業員1〜19人で3割、20〜99人だと一行取引は2割にも届かないのです。
日本の中小小規模企業に多くの金融機関がアプローチしていることに驚くのですが、昨今、顕著になっている地域金融機関の越境戦略で、この傾向は加速しているのかもしれません。
その一方で、業況の悪くなった事業者は金融排除を受けていることも想像に難くありません。
これからの中小企業白書では、この辺りの分析をお願いしたいところです。
さて、
中小小規模企業にとって、取引金融機関が多いということは借入条件を天秤にかけることができるメリットがあるようですが、ひとたび業況が悪化しようものならば雲散霧消するリスクを拭い去ることができません。多くの場合、こういう局面では取引金融機関の数の多さは保険になりません。
地域金融機関の中には腰の引けた「ぶら下がり融資」(メインバンクになる気がない) だけで残高を積み上げているようなところも少なくありません。こういう金融機関は取引先の経営改善や事業再生の過去の実績を見れば一目瞭然です。債権回収だけは鬼のようですが、、、
このような「ぶら下がり融資」志向の金融機関は、ワタシに言わせれば、無責任極まりない存在であり (これだって立派なビジネスモデルだという意見もあるのですが、そういう考えには組みしません)、中小小規模企業にとってはリスクの高い存在と考えるべきでしょう。
メインバンク不在は絶対に避けるべきです。
「我々がメインバンクとなったからには、たとえ業況が悪くなっても (不実の行為がない限り)、必ず面倒を見る。ただし金利が低いからといって他に乗り換えるようなことをやったらその限りではない。」
これは某地域金融機関のトップの発言です。
こういう啖呵を切れる地域金融機関のトップが増えてくれば (ワタシはそうなってほしいのですが)、米国と同様、日本でも一行取引や限定された複数取引の中小小規模企業が多数派となるのではないでしょうか。