7月23日のブログで、
地域金融機関が、さまざまなサービス等を提供する外部業者との提携先を増やすことを証しとして、ソリューション営業であると誇示?する風潮に苦言を呈しました。
信頼関係もなく、平時のコミュニケーションも絶滅状態にある金融機関が、ソリューションのメニューリスト (外注先の羅列) を示しただけで、顧客は自らの抱える問題を金融機関にさらけ出すとは思えません。
こういった customer driven とは対極にあるメニューリスト営業は、リレバンでも何でもなく、プロダクトアウトそのものだと思っています。
本ブログに関し、中小小規模企業の経営アドバイザーとして、日々、企業経営者の相談相手となっている X さんから、メッセージをもらいました。
生々しい内容ですが、ポイントを抜き書きします。(一部表現を変更しています)
「金融機関の中には品揃えだけを増やし、これがソリューション営業だと鼻息を荒くしているところが多くあります。不動産情報の斡旋、太陽光パネルの設置、自動販売機の設置、リフォーム…これでは金融機関ではなく、ただの総合代理店です。しかも困ったことに『取引先からニーズを聞く → リストの中から提案する』という順序をとりません。顧客ニーズなどお構いなく『金融機関へのメリット還元の大きいものをリストの中から選んで、それをとにかく取引先に勧めまくる』という方法をとります。恐ろしいことに、若手の行員が『これが世に言うソリューション営業なんだ』と勘違いしたまま、上記の提案を繰り返していることです。」
さて、
リレバンの議論がスタートした2003年に金融庁は実質的な規制緩和をしました。(詳細は橋本卓典さんの「捨てられる銀行」〜講談社新書〜に書かれています)
取引先企業に対する経営相談・支援機能の強化の観点から、銀行が行うコンサルティング業務、ビジネスマッチング業務、M&Aに関する業務、 事務受託業務は、事務取扱いガイドラインの変更により、「その他の付随業務」として認められたのです。
現在、多くの地域金融機関がビジネスの主柱として掲げているソリューション営業とやらは、このガイドライン変更によって可能になりました。
ただ、
このガイドライン変更の原文を読んでいる人は地域金融機関にどれだけいるでしょうか。
とくにこの文言です。
「なお、実施にあたっては、顧客保護や法令等遵守の観点から、以下の点について態勢整備が図られている必要があることに留意すること。
①優越的地位の濫用として独占禁止法上問題となる行為の発生防止等法令等の厳正な遵守に向けた態勢整備が行われているか。」
ソリューション営業において、優越的地位の濫用行為をはたらくことは禁じ手です。
X さんの話に出てくるケースは、かなり危なっかしいですね。
顧客本位の持続可能なビジネスモデルとはとても思えません。
金融庁のモニタリングの対象となって然るべしです。
コメント
「ソリューション営業=提案型営業」と勘違いしている輩が多い、また書籍を見ると、「『仮説を立てて提案する』ことこそがソリューション営業」と主張しているものが多いと感じています。。
これでは、金融機関の都合を押しつける(金融機関の利益を優先する)プロダクトアウト型の営業と何ら変わらないと言えます。
ソリューション営業とは「『向き合い』『語り合い』『観察』(MKK)することで、仮設を立てる。その上でふたたび『語り合う』ことで検証し共通の認識を醸成する。そのうえでソリューションを提供する」ことです。
あまりにステレオタイプの発言や記述が多く嘆かわしい限りです。
これらの発想や記述は「業推無罪」の発想から抜け出せていないと考えざるを得ないと思っています。
「ソリューション営業の進め方(竹内心作:銀行研修社)と言う本があります。鋭く本質をついた本だと思っています。「事業性評価から「業績」につはげるノウハウ万歳」という副題に最初首をかしげましたが、「本質を押さえた活動が結果的に業績につながる」という組み立てになっています。(ステレオタイプの副題になっているのは残念でしたが)
多胡先生の今日のお話に共感なさる方は是非お読みになることをお勧めします。
「業績につはげる ⇒ 業績につなげる」の誤りです。最近目が薄くなりました(笑)。
もうひとつミスがありました。』万歳⇒満載」です。すみません。