customer driven

この1ヶ月、いくつかの地域銀行の幹部の方たちと突っ込んだ議論をしました。

いずれも無責任なレイジーバンカーではありませんでした。( 厳しく批判しているせいか、レイジーバンカーからは敬遠されているようです、苦笑)

皆さん業況は厳しいのですが、難局打開のため活路を見出そうとの真摯な姿勢に心を打たれました。微力ながらお手伝いいたします。

ワタシの方はいつも同じ論点なのですが、ワタシ自身も議論の中で、改めて頭の整理ができたと思っています。

まず、間違いなく言えることは、地域金融機関にとって、いまや持続的な収益を見込めるのは、リレバン手法によるミドルリスク層の中小小規模事業者との取引しかないということです。

優良先や担保のある先は、マイナス金利と金融機関の過当競争により、もはや利益が見込めるゾーンではありません。いくらボリュームを増やしても金利収入に貢献することはありません。地元のミドル層を放置して、遮二無二に越境作戦を行なっている地域銀行の活動は、ワタシには愚の骨頂としか思えないのです。

ところが、ミドルリスク層との取引となると、昨今、ほとんどの金融機関が高々と目標に掲げているものの、上澄みを掬うだけのつまみ食いであること、本腰が入っていないことを、顧客からとっくに見透かされています。

「業況が悪くなっても逃げない」(取引先が真摯な経営を行うという前提での話ですが) という姿勢を示せないかぎり、収益基盤につながることはありません。

さらにいうと、地域金融機関はミドルリスク層と決めつけている先の事業実態を、本当に分かっているのでしょうか。

長期融資の比率が9割を超え、正常運転資金までもが長期化している中で、金融機関は借り手の事業の中身を理解することができるとは到底思えません。

ワタシはミドルリスク層といわれる中小小規模企業や個人事業主のうち、かなりの数は、金融機関が事業取引の中身まで理解すれば (金融検査マニュアル時代以前の金融機関は当たり前のこととして行っていたこと)、そもそものリスクは甚大なものではなく、不測の事態への予防も含め、問題なく対応できるのではないかと推測しています。

ミドル層にしっかりと向き合うこと、すなわちこの層のお客さまとの確固たる信頼関係を築き、何でも最初に相談してもらえるようなれば ( ファーストコール バンクという言葉を使う金融機関も増えてはいますがキャッチフレーズだけで内容は伴っていません)、お客さまの課題をシャープに、タイムリーに、キャッチできるようになります。

そうすればしめたもの。

お客さまの課題を解決するために必要な情報も、金融商品も、サービスコンテンツも、向こうからどんどんやってきます。多くの業者が持ち込んでくる中からベストなものを選択すれば良いのです。

*****

昨今、課題解決のためのソリューション機能の強化ということで、地域金融機関が、さまざまな金融商品や金融サービスを提供する外部業者と提携するケースが増えています。それをプレスリリースして、「やっているぞ」と、、、

ところが、

提携先を増やして、課題解決のメニューの品数を揃えれば、ソリューションができると考えるのは大間違いです。

信頼関係もない本腰の入っていない金融機関が、ソリューションのメニューリスト (外注先の羅列) を示しただけで、果たして顧客は自らの抱える問題を開示するとでも思っているのでしょうか。

こういうメニューリスト営業は、リレバンでも何でもなく、プロダクトアウトの域を出るものではありません。

ソリューション・プロダクトが先行するのではなく、「信頼関係に基づいたお客さまの課題発掘ありき」というのが正しい図式です。

いわゆる customer driven (顧客発) ですね。とにかく顧客を押さえることです。それも多くの課題を抱えるミドルリスク層の顧客をです。

他を寄せ付けない、強いミドル層の顧客基盤があれば、地域金融機関の規模はもはや問題ではありません。むしろ規模が大きくなると顧客グリップは甘くなる傾向にあります。

customer driven には適正規模があるのです。

スケールメリットの追求や効率化は、顧客接点とは関係のないバックヤードのところで徹底的に業務提携や連携により進めるべきであり、これこそが真の意味でのアライアンスです。当事者同士の利害がぶつかり収拾のつかない状況となり、長期の泥沼化とつながるような合併や資本統合とは、スピード感が違うのがアライアンスなのです。

合併や資本統合は、もはや out of date (時代遅れ) と断言して良いでしょう。

一方の金融機関への完全な片寄せや、金融機関の救済以外では、ほとんど意味をなさない手法となり下がっているのです。

out of date の手法を性懲りもなく煽るメディア報道に騙されないように気をつけたいものですね。

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