明暗を分けたものは

10数年前、金融行政の某幹部が

「なぜ、リレバンに取り組まないのだ。」

と厳しく問い詰めたところ、

「我々のビジネスモデルは違う。リレバンを押しつけるのは行政の介入だ。」

と強く反駁されたという話を思い出しました。

相手はスルガ銀行です。

当時この話を聞いた時、独自のビジネスモデルを追求する姿勢を応援したい気持ちがあるものの、ワタシのよく知る伊豆の某老舗旅館が、スルガ銀行のビジネスモデル転換から、資金繰り困難に至り破綻したことを思い出し、複雑な気持ちになったことを覚えています。

ただ、スルガ銀行のような地域二番手銀行がフルラインから特定の業務に特化するというのは正しい選択だと思ったことは確かです。

そして、他地域の二番手以下の銀行が明らかに体力、顧客基盤でかなわないトップバンクと同じことをやり続けて、消耗するさまを見て、「経営者は何をやっているのだ」と批判的な目を向けていました。

その後、二番手以下銀行の多くは特化作戦のごときビジネスモデル転換をしましたが、スルガ銀行と比べれば中途半端でありました。

それにも増して、スルガ銀行も含め、揃いも揃って、個人金融のプロダクトアウト型トラバンへの傾斜だったのには非常に違和感を感じました。

いまや住宅ローンなどのプロダクトアウト型個人金融は過当競争により収益を生むものではなく、非金融業界からの参入もあり、もはや銀行のコスト構造で対応できる業務ではありません。

スルガ銀行のような不正への道を歩むのは論外ですが、プロダクトアウト型個人金融に傾斜した二番手以下銀行の中には、財務面で深刻な状況を抱えているところも少なくないように感じます。

その一方で、

地域二番手以下銀行には別な道を選んだ銀行があります。

金融機能強化法の公的資金を導入して、企業の財務支援、本業支援、雇用維持、さらには地域の面的再生を行おうという選択肢です。

ビジネスモデルは自ずとリレバンになります。

こちらの道を選んだ地域銀行のリレバン取組み内容には濃淡があるものの (金融機能強化法の趣旨を誤解しているかのような銀行がないわけではなく、こちらの方は非常に問題)、真摯に組織的継続的な対応をしている銀行は、同一地域のトップバンクが“マイナス金利と人口減”(言い訳の定番)とやらで苦しむ中、着実に成果を上げています。

二番手以下銀行の明暗を分けたのは「金融機能強化法」だとワタシは思っています。


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コメント

  1. 楢山 敬 より:

    幾多のハードルはあると思いますが、ブレずに、地域のためにしっかりとリレバンに取り組む(公的資金活用含め)。これが地域金融機関の存在意義なのでしょう。