金融排除を助長する合併を許すな

地域銀行や信用金庫で、いくつかの統合合併が進行しています。

基本合意のもと、いざ統合合併のプロセスに入ると、そのためのコストに愕然とし、さらには異文化の衝突に伴う機会費用に辟易しているとの話が耳に入ってきます。

統合合併によるバラ色のシナジー効果の前に立ちはだかる障害の大きさに、合併経験のあるワタシの友人たち (経験3回というツワモノもいます) は口を揃えて、「救済や片寄せでもない限り、合併なんかやるべきじゃないよ」と断言します。

さて、

金融行政サイドは、「統合合併は顧客本位のビジネスモデルをレベルアップするためでの手段である (それ自体が目的にあらず) 」と旗色を鮮明にしています。

しかるに合併の記者会見では「両者が異なる場合には (顧客にとって?) 良い方を選択する」と、いかにも顧客本位であることをアピールするものの、実際は両者の陣取り合戦とパワーバンランスによって新組織のビジネスモデルが決着するのが世の常のようです。

合併プロセスで、両者の折り合いがつかないポイントの中で、顧客にとって一番切実な問題となるのは「融資方針」のところです。

地域銀行でも協同組織金融機関でも、融資方針は大きく2つに分かれます。

パターン① → 誠実な経営姿勢の企業であれば、業況悪化の際にも支えていく。必要であれば新規の資金需要にも怯まず対応する。

パターン② → 取引先企業の業況が悪くなったら、新規融資に応じるどころか、手のひら返しで回収に入る。

合併する2つの金融機関の融資姿勢が、パターン① と パターン② とで異なっている場合、前者の融資方針① を取る金融機関 (A) に合わせる場合には間違いなく顧客本位のレベルアップです。金融包摂が広がるからです。

ところが、後者の金融機関 (B) の融資ポリシー② で統一されるようだと大変なことになります。

金融機関 (A) の取引先の中で、業況の芳しくないゾーンで金融排除が起こることが懸念されます。

“顧客本位” の合併とは程遠い、悲惨な結末が待っています。

どことは言いませんが、こういう流れで合併プロセスが進んでいるケースがある (例の某買収案件?ではありません) との話が、私の耳に入ってきました。

真偽のほどは定かではありませんが、こういうケースは合併そのものを見直すべきではないでしょうか。


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コメント

  1. 竹内心作 より:

    実は私が業務を受託している公的機関においても、統合の話が出ています。

    理由は、「業務の効率化」と「顧客満足度の向上」です。

    金融機関の場合と同じく、極めて耳ざわりの良い言葉なのですが、この二つの内容は既に矛盾しているのでは、と感じなくもないです。

    私は幸いにも(?)、銀行時代に合併を経験しておりませんので、実は今回の統合は楽しみです。冷静かつ客観的に事態を観察してやろうと思っています。

  2. 橋本卓典 より:

    竹内さんのご指摘の通り、大抵、効能は強調されて表記されますが副作用は語られません。

    ましてや数百億円の有形コスト、さらにはポスト争いという無形コストも勘案すると、とんでもない副作用があるかもしれないわけです。

    そしてこれもよくあることなのですが、二兎を追うと「効率」、「顧客満足」のどちらもが失われるのです。