ビジネスマッチングなどの本業支援や私募債などの財務支援を行うことがリレーションバンキングであるという人が多いのですが正しくありません。
これらの支援業務はリレーションシップバンキングを推進する中で実現する事象に過ぎません。
“ある前提がない限り”、ビジネスマッチングや私募債のような、ワタシに言わせれば金融商品サービスを並べて、それを顧客に提案することはリレーションシップバンキングではなく、プロダクトアウトの延長線上です。
そもそもリレーションシップバンキングは「思想」であり、安易にプロダクトに置き換えるようなものではありません。
そしてこの思想は、顧客との信頼関係の上にこそ成り立つのです。
いくらビジネスマッチングなどの提案を行なっても、金融機関の自己本位の儲け主義 (収益を上げることが悪いと言っているわけではありません、顧客との共通価値の創造です) に翻弄され続け、信頼関係が失墜し、金融機関に期待していない顧客は真剣に聞いてくれると思いません。
顧客は天岩戸にこもってしまっているのです。
天岩戸を開くには信頼関係の再構築。
ただ、金融機関の方が変わらなければ信頼関係の再構築は始まりません。
まずは金融機関は、「顧客本位のビジネスによって顧客との共通価値の創造を行う」、「誠実で真摯な経営している事業者からは業況が悪くなっても絶対に逃げない。」といった“決意表明”を顧客ごとに向き合ってしっかりと行うことからです。
信頼関係があってこそ、やっと真の意味の対話が始まり、顧客は金融機関に悩みを打ち明け始めるでしょう。
課題解決用のプロダクトを並べても天岩戸は開かないのです。
コメント
同感です。リレバンはその名前の通り〈関係性〉を中心価値とします。お客様や地域との関係性が希薄化している地域金融機関が増えているようで、心配です。
本業支援も財務支援も私募債も金融商品もビジネスマッチングもそれ自体は「手段」に過ぎません。ところが、多くの人々は「手段」と「原目的」を明確に切り分けないために、「手段」が「あらぬ目的」となってしまいます。さらに「原目的(目的地)」はすっかり失われているので、「手段」はおかしな方向に脱線を始めます。
例えば①本業支援先は正常先だけ、②単年度会計で収益性のない「手段」は縮小・打ち切り、③単年度会計で収益性が見込まれる「手段」だけが認可される、という具合です。
手段と形式が目的化すれば、本来の目的も実質も失われます。トレードオフです。そして、目先儲からない事業承継、創業支援の打ち切りは、会計年度をまたいだトレードオフを地域にもたらします。すなわち、いつか来るツケの清算です。
故に、算盤が目的化しないように論語が求められるのです。数値化できないリテラシー、倫理、利益の妥当性が問われています。
故に故に「我々は営利企業(信金信組は非営利団体)だ」という安易に使われる抗弁は危ういのです。論語が抜けた算盤は、暴走し、いつか組織や地域を破壊します。我々はいくつも暴走算盤の事例を目の当たりにしています。
全く先生のおっしゃる通り。
一番大事しなければいけない指針です。
お客様から信頼を得るのは人です。人を育てなくてはなりませんね。
他の業種だと鮮明に浮かび上がる結論ですが、この業界では中々・・・。
『我々は営利企業だから』で済んでしまう(と曲解できる)のは、やはり優越的地位があるからでしょうか。でもそれもいつか『捨てられた銀行』として過去のものとなるのでは。
プロダクトアウトが未だに好きである体質は、確かにあるようです。顧客本位のための一考察?ラジカルですが…評価を「顧客が営業店を評価(但しポピュリズムに陥らない)→営業店が本部を評価(顧客のためにサポート)」の仕組みが成立すると… 現状は営利企業とか(自らの財務体質向上?) 言って…「本部の目標→営業店の評価」なようですが…
楢山さん、
ラジカルなご考察ありがとうございます。
金融庁が3年間やっている企業アンケートがそれと類似していますね。プロダクトアウトの地域銀行への顧客からの評価(検討会議で見ました)はボロボロでした。
楢山さんのお知り合いの銀行の顧客評価は?