地域金融機関の決算発表とともに今後の事業計画が明らかになっていますが、どこもかしこもコンサルのオンパレード。
用意周到ともいえるコンサル計画もあれば、言葉だけが上滑りしているように思える金融機関もあります。
「リレバンなんて現実を知らない理想論、空論」と批判的だった金融機関が、コンサル営業に注力といった報道を見ると、複雑な心境です。
周知の通り、リレバンの機能強化が発表された2003年6月に預金取扱金融機関の付随業務としてコンサルティング業務が認められました。
事務ガイドラインの変更ですが、規制緩和と考えられます。
その時の経緯(いきさつ) は橋本卓典さんの「捨てられる銀行」に詳しく書かれています。
地域金融機関の経営基盤である地域の将来性を考え、地域屈指の「人材、情報、ネットワーク」を持つ地域金融機関の(お金以外の)“リソース”も併せて地域企業、地域経済のために活用しようとの深慮遠謀によるものでした。まさに地域金融機関と地域との共通価値の創造を考えたものだったのです。
しかるに地域金融機関の反応は驚くほど鈍く、その後の展開はプロダクトアウトのボリューム追求への傾斜というのがマジョリティとなりました。手間を惜しみ、時間軸を許容しない、安易な経営と言わざるをえません。
最近のコンサルティング大合唱を見て、
「追いつめられて、やっとかい」
と古株の年寄りとしては、イヤミの一つも言いたくなります。
実をいうと
西武信用金庫はリレバン創生期にコンサルティングによる本業支援に前向きに取り組んだ「数少ない金融機関の一つ」だった (過去完了形) というのがワタシの印象です。
その後、不動産融資を軸にしたボリューム志向の非常に強い金融機関に変質しまったように感じます。行き過ぎた成果主義と成果に対する身の丈を超えた報酬が背景にあったのでしょう。身の丈を超えた報酬は危険な蜜の味ですね。
以前を知るだけに残念です。
コメント
プロダクトアウトのコンサルは迷惑です。すなわち、手数料の組み立てからコンサルプロジェクトに入ろうとしていると大やけどをするでしょう。プロジェクト(必要なこと)を決めるのは、お客様です。必要ともしていないことを押し売りするのであれば、今の金融商品のノルマ押し込みとなんか変わりません。
私はその頃、本部で自己査定および償却・引当を担当しており、経営企画部から財務事務所に報告するために、リレバンに係る項目について記載しておりました。その当時、経営トップやトップが気に入れられている経営企画部長もリレバンについて理解していなかったのではないでしょうか。その頃に、多胡先生達から教えを請いて、リレバンを真剣に議論し実効性を高めるようにすれば、自金融機関や職員も真の意味で成長していたのではないでしょうか。悔やまれてなりません。
そもそも、フィーをいただいても許されるだけの品質を保てるのか、いつも疑問に思っています。
ある地銀が経営計画策定支援でフィーをいただいているときくと。右も左も手数料ビジネスだと言ってマネをしたがります。しかし、その地銀は20年を超える業種別審査と、地場産業の中核企業に職員を何世代かに渡り派遣を繰り返し、業界の内部から研究してきたから一定の品質が保てていると、お聞きしてます。
M&A、事業承継、事業計画、再建支援等々に取り組む人材の育成が優先され、基本と哲学教育が疎かになると、橋本さんご指摘のように、フィーありきのプロダクトアウト型の取組になる恐れがあり、かえって逆効果になる危険を感じます。「その事案で、いくら稼げるんや?」という、やり取りが聞こえてきそうです。
利益は結果です。くれぐれも行き過ぎたマネタライズには気をつけていただきたいものです。
橋本さんの仰るとおり、プロダクトアウトのコンサルは顧客にとって迷惑でしかありません。
顧客に必要とされコンサルティング支援を行う事で初めて意義を成します。
ビジネスコンサルの領域は銀行にとって未だ敷居が高いです(私のように属人的にやっている行員はおりますが笑)。
銀行の新たなビジネスモデルとなる可能性を秘めた非常に魅力的な領域ではありますが、「生兵法はケガのもと」。まず収益目線を止め、顧客の真の利益は何かを考えることが出発点です。
皆さんのお話しを聴けば聴くほど、パーパス、バリュー、カルチャーの重さを感じています。そこまで到達して初めて、ビジネスモデルと言えるように思います。