丸投げ厳禁

地域金融機関の多くは預貸率が高くなく、預金超の部分のほとんどを有価証券運用に頼らざるえない宿命を持っています。

有価証券運用やそれに関わるリスク管理の実務経験が豊富な人間が経営陣に入っている場合は良いのですが、担当部署に丸投げ、取締役会は担当部署の報告を形式的に聞くだけでお茶を濁しているケースが少なくありません。

「良きに計らえ」で担当部署に過大なリターンを求め、失敗したら担当部署に責任を取らせて幕引きというのは、経営として由々しき問題だと思います。

そんな組織では、誰も有価証券運用の仕事を希望しないでしょう。ワタシ自身、若い頃に邦銀で市場周りの仕事に長く従事していましたが、経営がこのような考えならば間違いなく職場放棄したでしょう。

有価証券運用での失敗は経営が責任を取るべきものです。経営陣は有価証券運用部門での個別の売り買いをフォローすることはできません。しかしながら、たとえば有価証券ポートフォリオに強いストレスをかけた場合の最大ロスを押さえておくことは「イロハのイ」、経営としての基本動作です。

有価証券運用での損失が当期利益を超えるようなことは、地域金融機関として絶対に許されないと、社外役員の仕事の中で習得しました。

地元のお客さまとの取引によって積み上げた利益を有価証券運用で吹っ飛ばすことに、言い訳の余地はないのです。

先期は多くの地域銀行が有価証券運用で大きな赤字を被りましたが、取締役会のメンバーは社外も含め、基本動作を怠っていたのではないでしょうか。


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コメント

  1. 新田信行 より:

    当組はマーケット運用は、原則禁止です。預金は負債であり、負債を原資にマーケット運用すべきではないとの考えです。

    少なくとも、運用するのであれば、その原資が預金という負債であり、預金者に対し、運用内容の説明責任があるということを念頭に置くべきだと考えます。

  2. 橋本卓典 より:

    差し詰め、専門家と目される人物に丸投げして、それで安心となってしまいがちですからね。

    敢えて失敗した時の想定を取締役含めて、認識しておかなければなりません。「大丈夫という想定」は必要ありません。