辛うじて得た利益を地域顧客のためにいかに活用するか

数年前は10%台だった上場地域銀行の配当性向(平均値)はいまや30%に届かんとしています。大きな配当負担額です。

株価を維持するための配当を増やすというのはわかるのですが、それでもPBR は 0.4 付近で低迷したまま、改めて上場する意味は何なのかを真剣に検討しなければならない局面に来ています。

~ 辛うじて得た利益を配当に回す地銀に対して、遠藤長官が「本末転倒ではないか。次のビジネスや地域、顧客に還元する方が優先順位が高いのではないか」と問うたやり取りを紹介。「経営の判断に尽きる」としつつも「地銀の頭取と議論していて上場しているメリットは感じられない」という考えを示した。(本日の日本経済新聞)

遠藤長官の話の通り、「①辛うじて得た利益を、②地域顧客のためにいかに活用するか」、これこそが地域金融機関の経営が考えねばならないことです。

②顧客のためにいかに活用するか、まずはヒューマンアセットへの投資。収益環境が厳しいからといって、人件費や人材教育費にメスを入れるというのはもってのほかです。

プロダクトアウトのトランザクションバンキングが四面楚歌となり、AIフィンテックを駆使した異業種によって追い込まれることが明らかとなった以上、顧客本位のリレバン型ビジネスモデルを粛々と行うことが鉄則であり、このビジネスモデルは労働集約型、ヒトが行う仕事です。

このリレバン型ビジネスモデルは時間軸を持った組織的継続的な運動とならない限り、収益増加にはつながりません。イベントや属人的なリレバンでお茶を濁している金融機関はいつまでたっても収益向上を見込むことはできないでしょう。

そういう中で、①辛うじて得た利益を増やすには、コストカットを進めねばなりませんが、

~アライアンスによるコストダウン (→ 統合合併を煽る無責任な声も大きいのですが、痩せ細った地域金融機関はそのためのコストや機会費用を許容できる状況にありません)

~上場の見直し (→ 東京証券取引所の市場区分再編の議論の中で時価総額の小さい地域銀行は決断を迫られることになるでしょう)

といったことは早急に経営の中で議論をしなければならないと思います。

すくんでいる場合ではありません。

 

 

 

 


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コメント

  1. 橋本卓典 より:

    地域金融の取材を始めた頃、ある上場地銀になぜ上場しているのかを問うと、「東証1部上場だと優秀な学生が就活でやってくる」と言われ、面食らいました。これは相当深刻な病状です。