「貸せる先にはどんどん貸し込む」という話の続編です。
首都圏のような市場が大きいところはいざ知らず、地方都市ともなると「貸せる先」は限られています。
こういう地域では赤字企業であっても、赤字の期間が短ければ融資に踏み込んでいく傾向が見られます。
このことは「金融包摂ではないか、結構なことだ」と褒められるかといえば、そのような単純な話ではありません。
そもそも赤字企業といっても、事業自体は黒字でありながら、長期借入金の約定弁済によって赤字化している中小企業は少なくありません。
こういう先に赤字補填の融資をすることが果たして顧客本位といえるのでしょうか。
まずは長期借金漬けからの脱皮。本来の資金需要に合致した債務形体 (運転資金、設備資金などの切り分け) への借入金のリバランスを支援すべきです。これこそが資金繰り支援ですね。
それとともに本業面のサポート (販路開拓支援など) によって、企業の事業キャッシュフローを良化することが合わせ技として求められます。
このような資金繰り支援と本業支援による P/L 改善 こそが、顧客本位の金融機関がやるべきことです。安易に赤字対策の資金を貸し付けることではありません。
言うまでもありませんが、こういうアクションプログラムは、赤字転落から時間を経ないうちに実行すればするほど効果があります。早期治療が鉄則です。
さらに、事業そのものが赤字となっている場合であっても、資金繰り支援と本業支援による P/L 改善というプログラムは変わりません。時間軸が長くなるだけです。
翻って、地域金融機関ではこのような P/L 改善の活動を業績評価に組み込んでいるでしょうか。
顧客本位を標榜する地域金融機関であれば、融資ボリューム一辺倒の業績評価からの見直しを考える段階にきていると思います。
さあ、どうする。
コメント
ここまで来ると、倫理、道徳の問題ですね。どんなクレジットポリシーをお持ちなのか、見たいですね。クレジットポリシーのチェック、指導は行われているのでしょうか?お飾りのクレジットポリシーなのかな?
組織として本気で顧客本位を目指すことが前提ですが、
もし行職員に目標管理シートのようなものを作成させているのなら一人一人全員のシートを一度検証してみることも有効かと思います。
きっと中には本気で顧客本位を考え顧客の経営指標改善など、単なる業績評価項目と異なる独自のアイデアで項目を設定している人間もいるのではないでしょうか。
意外と現場の「個」が持つ念いが経営の大きなヒントになるかも知れません。
但しこれも組織に「心理的安全」が備わっている場合に限りますが。
最近、「ゾンビ企業」という言葉を耳にしますが、典型的な「分かったような薄っぺらい言葉」だと思います。「理念と収益の両立」という、もっともらしい言葉を装って、その実、理念は度外視され、収益ありきの社内政治しかなされないノルマ経営と同じです。
多胡さんが指摘する「そもそも赤字企業といっても、事業自体は黒字でありながら、長期借入金の約定弁済によって赤字化している中小企業」は、ゾンビ企業でしょうか。借金漬けで完済のめどが付かないのを「ゾンビ」と言うのであれば、危険な思想です。そもそもゾンビにしたのは誰か、という問題です。
捨て銀3でも書きましたが、大企業の下請けで「精神的奴隷」に成らざるをえない中小零細企業は、敢えて、粗利を潰して、コスト叩きから免れようと必死です。粗利の低さを生産性の低さと呼ぶなら、これはゾンビでしょうか。ゾンビにしたのは誰のせいでしょうか。
最後に以下の記事。
我々は一体、何をやっているのでしょうか・・・日本人に限りません。呆れて笑ってしまいました。あんたらが言うな、と。なにをか言わんや。
◎株主最優先の方針見直し
米主要企業の経営者団体
【ニューヨーク共同】米主要企業の経営者団体「ビジネス・ラウンドテーブル」は19日、株主の利益を最優先としていた従来の方針を見直し、顧客や従業員、取引先、地域社会、株主といった関係者すべての利益のために経営すると発表した。
米国では、大企業による株主重視の行き過ぎや従業員の冷遇が貧富の格差拡大を助長しているとの批判があり、経営者団体の方針見直しにつながった。
新方針には181人の経営者が署名した。金融のJPモルガン・チェースやゴールドマン・サックス、IT関連のアマゾン・コムやアップルなどの経営トップを含む。
同団体は1978年以来、企業統治の方針を定期的に提示している。97年から株主を最優先とする方針を承認してきた。
JPモルガンのダイモン最高経営責任者(CEO)は声明で「一流の経営者は、従業員や地域社会に投資している。長期的に成功するための唯一の方法と知っているからだ」と指摘した。
新田さま、
クレジットポリシー、形式主義のオンパレードです。
監査部門も機能していないし、
橋本さま、
いろいろな会議に出るとゾンビ企業と声高に言うヒトがいます。誰がゾンビにしたんだとおもいますよ。
不要な治療を継続して、自然治癒力を奪うようですね。
様々な業種、人間関係において「依存」は何も生み出しません。
銀行員時代に同僚から「ソフトS」と言われました。
買いたいと仰る方をお断りすることがしばしばあり、その会話は両隣の窓口に聞こえます。
担当が変わっても安全にお取引を続けていただけるように、お客さまがご自分にとって必要な手段やリスクをご判断していただけるよう努めました。
そういったお客様たちには今後行職員を見守っていただくようお伝えし退職しました。
バブル期、大手銀行さんは預手を推進先企業の社長の目の前に置き、新規融資の推進をしていました。あの頃も利益至上で融資残高競争が徹底して行われました。そしてバブル崩壊、多くの企業が消えてゆきました。
今また将来的に安定的に利益を確保できる金融機関になることが指針として示され、各金融機関は本業利益を上げることに血眼です。
私は信用組合の人間ですが、各組合のディスクロ誌を見るとほとんどの組合が減収減益もしくは減収赤。赤となっている組合は不良債権処理とそれに関連し固定資産の減損処理によるものです。
本当に各組合厳しい状況にあります。ここで目先の収益だけに拘ると信用組合の本来の存在の意味が消えていくような気がします。現状の組合員を再確認し、その組合員にどう支援すべきなのか。またこれからの組合員をどの層に求めるべきなのかしっかり具体的そして早急に考える必要があります。このところ信用組合がみなし大企業へ接近している様子もあり、信用組合が信用組合として存在するのか、それとも単なる金融機関になるのか、大きな岐路に立たされているように感じています。