畏友 ◯岡さんからの、9月6日の日本経済新聞 第一面記事「担保権を動産にも設定 法務省、機械・在庫対象へ 」に違和感ありとのメッセージを受け、改めて当該記事を読みました。
◯岡さんは、
『景気が悪化するなどして融資が受けにくくなれば、企業がABLを利用するニーズが大きくなると思われる。』(原文)
という箇所に、そもそも「窮境企業にとってはABLは危険な融資手法であり、成長が早く、内部留保が追い付かない一部の優良企業等について、有効な融資手法と言える。」と違和感を示しておられます。
ワタシも同感で、事業の首根っこを特定の金融機関に押さえられたら (動産を担保に取られたら)、他の金融機関は腰が引ける、つまり借り手としては金融機関の選択肢が狭くなるでしょう。ABLを実行する金融機関が一行取引 (丸抱え) の覚悟を決めているのであれば、景気が悪くなろうが構いませんが、そういう覚悟のない金融機関 (圧倒的な多数派です) だったら悲惨です。
この記事の「景気が悪化するとABLニーズが高まる」との指摘は意味不明です。
本件は機械や在庫などを対象とした担保権を法制化や、新たな登記制度により ABL が増えるのではとの観測記事ですが、ABLが増えない理由は、制度以上に “金融機関の姿勢” や “借り手の本音” のところにあるのではと思いますが、いかがでしょう、日経さん。
コメント
「景気が悪化するとABLニーズが高まる」
風が吹けば桶屋が~的な響きがありますが、たしかにそういった一面もあるのかもしれません。
ただ、企業サイド、取分け中小企業の立場からすると、果たして歓迎する話なのか、疑問が残ります。
金融機関は企業のモニタリングを徹底し、適正な事業性評価に努めていくことを第一義とするのであれば別ですが、“共通価値の創造”といった視点を欠いた(敢えて目を瞑った?)、方便としての使われ方にならないことを祈ります。
経常運転資金は、在庫や売掛金等短期に換金可能な資産が裏付けにあることから、まともな金融機関は見合いで融資(短期継続融資)をします。
赤字資金の調達が必要となった時、メイン行が、例えば在庫に担保を設定したとします。とすると、在庫という返済の裏付けがあることから、見合いで経常運転資金を融資していた銀行は、返済の裏付けのない赤字資金に、知らぬ間に入れ替わることになります。つまり、メイン行とお取引先に、だまし討ちされたのと同じ結果になります。
だまし討ちにあった金融機関(このロジックに気がつく実力を持った金融機関)が黙っているわけがなく、結果的に企業にも不利益を与えます。
本来ABLは、成長が早く、内部留保がついて来ない成長途上の優良企業予備軍(◆)に有効な融資手法であり、窮境状況にある企業には極めた危険な融資手法です。
ファクタリングも同様に、使い方を誤ると、金融機関の支持を失い、企業の命脈にかかわるケースが出てきます。
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◆このような優良企業予備軍については本来、事業性を評価することで、無担保無保証で融資することが原則です。
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自行の債権の保全ではなく、当該企業のメリット、デメリット、あるいは、自行の覚悟を踏まえて、取り扱うべきです。
寺岡さんのご意見に賛同いたします。
経常運転資金は、メインバンクと取引先との信頼関係が前提であり、私は中小企業融資におけるABLについては、懐疑的です。ABLは、信頼関係がないから担保設定するように思えます。