2015年1月に金融検査マニュアルが改定され、短期継続融資 (短コロ) の査定上の取り扱いが変わったにもかかわらず、長期運転資金の比率はなかなか低下しません。
そのため事業自体が黒字であっても長期借入金の約定弁済で赤字となり、資金繰りに苦労している中小小規模企業の数はなかなか減少しません。
そういう中で、正常運転資金を切り出して、専用の当座貸越で組織的継続的に対応する地域金融機関が出てきました。
ある雑誌で取り上げられていた地域金融機関では
「決算上の数値を入力するだけで資金繰りにおける課題や正常運転資金が判明する “分析システム” を開発し、分析結果を持参して、専用当座貸越を提案する」
ことで成果を出しているとのことです。
専用当座貸越の目的は2つあります。
「事業の実態把握」と「資金繰り支援」です。
後者はすぐに結果が出るので、そちらに目が行きがちですが、前者については事業性評価そのものであり、事業の実態把握と動態モニタリングできるような仕掛けが不可欠です。
「決算上の数値を入力しただけのシステム分析」がその仕掛けに該当するのでしょうか。
システムの内容を知らずにいうのは言い過ぎかもしれませんが、違和感を感じるのはワタシだけでしょうか。
それともワタシの想像を超えた魔法のシステムなのでしょうか。
コメント
関わっているコンサルの手法を類推すると、
金融当局の関心をステレオタイプにとらえ、「短期継続融資をシステム的に売る。そのセールストークを伝授する」というように読めます。事業性評価の「プロダクトアウト化」のように見えで仕方ありません。
経常運転資金の算定は、機械的に出来るものではないように思うのですが・・・。また、経常運転資金の把握の過程で当該会社の事業性が見えてくるものです。
追伸です。
当該金融機関には優良企業だけでなく、その他の中小企業に対しても、事業性評価と資金繰り支援にしっかり取り組んでいただきたいですね。
事業性評価をプロダクトアウト化する、
とんでもない話ですね。
寺岡さま、
事業性評価と資金繰り支援が本当に必要なのに、優良先だけを対象にするようでは?
リレバンの本気度を感じることはできませんね。
皆さんの意見に加えます。そもそも既存取引の金融機関がなぜ資金繰り是正に取り組んでいないのかという事象のそれなりの解明、それに対して自行が当該事業を評価検討し、資金繰り是正や本業支援などで課題が解決する一定の見通しがなければ、金融支援の意味がありません。単純にBSPL数値を足し算引き算しても何かが見えるわけがないのですから。つまりこの金融機関は近い将来に不良債権比率を著増させる可能性が高いと断じます。
昨日のジンテックセミナーで、私も学びましたが、リレーションシップ・バンキングとは、
「心理的不安の除去+信頼関係の構築」
が、欠かせないということです。リレバンそのものと言い換えても良いのではないかと思います。
長期運転信金は、借り入れと返済のバランスを崩壊させ、資金繰り不安を招きます。事業者の本業が「資金繰り」になってしまう悲劇を招きます。故に、話になりません。論外です。金融庁は、対話で真意を質すべきです。
日下さんも昨日の講演で、「もはや議論の余地のない話だ」と指摘していました。脱検査マニュアルでも、組み替えは必須です。怠慢はレイジーバンクです。
次に、信頼関係の構築です。
多胡さんご指摘の「短期運転資金の自動対応」で構築できるものなのかという話です。確かに、資金繰り不安は多少なりとも改善されるかもしれません。
しかし、これも昨日の島根県信用保証協会の小野拳さんのご発言でも分かる通り、事業者の中には「せっかくよい品質の商品を仕入れる目利き力があっても、仕入れ価格と値付けによる粗利の管理さえ、ままならないところもある」ということが現実です。
こういう事業者は、「センパイ」の事業者に話を聞きます。センパイは「税金を支払わないように赤字にしときゃいいんだよ」と訳の分からんアドバイスをします。自己資本比率の乏しい中小企業に節税保険商品を売りまくる「セイホ」も、資金繰り不安に誘い込んでいることを自覚していません。
こういう地雷や落とし穴は、事業経営には数多あるということです。
粗利のコントロールは、最終的には事業者が学ぶしかありませんが、それまでは伴走支援が必要です。短期運転資金だけでは、学べないのではないでしょうか。