週刊金融財政事情の9月2日「逃げない協同組織金融機関」の中で、ワタシの2つのコメントが掲載されています。
〜「中央機関を本店とみなし、一つひとつの信金・信組を支店とみればシステム費用を案分していることになり、事務コストの効率化が図られている」と、地域の魅力研究所の多胡秀人所長は解説する。ある意味、協金はシェアードサービスの潮流を先取りしているわけだ。〜
~ 浜松いわた信金の非常勤理事を務める多胡氏は、「環境保護をテーマにしたファンドや融資商品を作ることがSDGsの本質ではない。信用金庫の生きざまそのものがSDGsであり、地域の持続性のために人や資本を配賦するのは当然」と強調する。~
2つのコメントのうち、
前者は協同組織金融機関のバックヤード共通化による効率化を述べたものなのですが、
後者では、最近SDGsに注目が集まる中で、これをプロダクトセールスに置き換える地域金融機関が多いことに苦言を呈しています。
ところで、
昨年1月に環境省が金融庁とのコラボでESG金融懇談会を立ち上げ、そこに主たる投資家団体や金融機関、有識者が集結して議論を開始しました。
約半年、7回にわたる議論を重ね、方向性を練り上げたのですが、第5回の会合では、京都信用金庫の増田理事長 (当時) が協同組織金融機関を代表してプレゼンを行なっています。(環境省のホームページにプレゼン要旨や資料がアップされています。)
~SDGsは17の目標と169のターゲットで構成されている。「金融」と言う 言葉は9つのターゲットで出ており、その過半は金融サービスへのアクセ ス改善・拡大である。最も ESG 金融を意識した内容は、8.10「国内の金融機関の能力を強化し、すべての人々の銀行取引、保険および金融サービス へのアクセス拡大を促進する」であり、これが ESG 金融ではないか。~(増田さんのプレゼン要旨より)
増田さんのお話の通り、ESG/SDGs金融は金融包摂の世界を追求することであり、協同組織金融機関の「生きざま」そのものではないでしょうか。
コメント
その通りです。
協同組織金融の目的は、組合員・会員の発展とそれを担う職員との関係性の活性化にあるのであって、金融機関単体の業容拡大にはありません。この点踏まえ、中央機関は行政政策の橋渡し指導以上に各単位金庫・組合が協同組織金融の機能を効果的に発揮連携ができる目標政策と組合員・会員・職員に面倒がない簡易な取引システム構築に最大限の力を発揮するべきと思います。
多胡さんのおっしゃる『なんちゃってSDGS』は、SDGS融資と称して取引先の事業がSDGSに適合してるかどうかを判定する側に廻りこみ、肝心の自らの金融事業がSDGS適合かどうかのチェックが緩いままなことが多いのです。実に破廉恥ですよね。
SDGsの核心は宇沢経済学の社会的共通資本にあると考えています。今の地域金融機関はこの共通資本に該当しているでしょうか?
SDGsの核心は宇沢経済学の社会的共通資本にあると考えています。今の地域金融機関はこの共通資本に該当しているでしょうか?
今、GABVのアジア大会でインドに来ています。持続可能な社会の実現に向けて、サステナブルな金融機関のムーブメントは、世界に拡がっています。日本の地域金融機関の皆さん、視野を広げましょう。日本は遅れていますよ。世界にはたくさんの好事例があります。
地域金融のサステイナブルは「地域の元気」そのものです。地域の元気の役に立ってない金融機関は、存在しなくて良いと思っていますし、存在しなくなると思っています。
よってSDG'sを語る金融機関は、具体的にどう「地域の元気」に役立っているのかを説明すべきです。「金融仲介で貢献」では説明が足りません。単なる資金供給では「役に立っている」とは言えません。
山形大の小野教授の持論ですが、産業が「青年期「から「老年期」に突入しているのに、金融機関の資金供給は、相変わらずの「カロリー営業」「カロリー金融」になっている、と。
若い頃は「三食揚げ物」で良かったのですが、壮年期以降はそうはいきません。故に金融は高度化しなければならない、小野先生は慧眼です。