余力のある廃業の前に

10月13日のブログ「おくりびとに金融機関はいなかった」の続編です。

先日放映されたNHKスペシャル「大廃業時代 ~ 会社を看取るおくりびと」では、リスクの高い企業を無用に延命するのではなく、取引先や従業員、そして地域経済にも大きなダメージを与えない「いい廃業」を取り上げていました。

この番組には金融機関は登場しなかったのですが、ワタシは「余力のあるうちの廃業」の前に、金融機関がとことん中小小規模企業を支えたのか、ということを厳しく問うのが先だと考えます。(そういう番組を作ってくださいよ)

すなわち、たとえバランスシートが債務超過となっていても、借入金の延滞を起こしていても、企業経営者の“本気度”を感知すれば、地域のことを本当に考えている地域金融機関 (非常に少ないのですが) は動きます。

当該企業に将来キャッシュフローを生み出す事業、商品サービス、受注工事などがあれば、それらを選別し経常運転資金を供給し、本業面でのサポートを併用しつつ、当該企業の収益につなげていきます。そしてそれを積み上げて当該企業のバランスシートを改善していくのです。

とくに事業者数が限られている過疎地では「余裕があるうちの廃業」を進めていけば、荒野が残るだけです。廃業に追い込むのではなく、時間軸を持って、地道に企業の維持・再成長に汗をかくしかありません。

13日のブログに対し、橋本卓典さんからコメントをいただきました。

~「おくりびと」なる、最もらしい呼称で、廃業需要を掘り起こしていこうとするアプローチは本当に正しいのか、という疑問が私にはあります。たられば、パラレルワールドを生きることができない我々には、もう一つの道を体験することはできません。ただ、番組でも「やめてしまうという選択」が、その後に何をもたらしたのかという検証が、いまひとつ腑に落ちませんでした。番組に登場していた女性経営者は廃業して、百貨店の販売員に就職していましたが、前途は幸せになったのでしょうか。地域は明るくなったのでしょうか。「あの会社が廃業しちゃったよ」というニュースは、「それで今はすごく幸せだってさ」という続報に繋がったのでしょうか。~(本文から抜粋)

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コメント

  1. 橋本卓典 より:

    Amazonは陸海空の運送免許を取得済みで、既に貨物輸送用ボーイングを60機近く運航し、2021年には70機体制となり、今やUPSなどの貨物輸送大手と肩を並べています。廃業支援によって、人は事業運営の不安から解放されることになるかもしれませんが、10年後は、地域に残る多くの人がAmazonの「配送係り」となってクルマを走らせているかもしれません。あるいは大型ショッピングセンターの従業員に。それはそれでワークライフバランスかもしれませんが、法人税収のダダ漏れは加速しますし、それ以上に、夢を求める多くの方々が地域を離れるのではないでしょうか。この辺り、地方自治体の方々はどう考えているのでしょうか。結果、都市圏と地方圏の不均衡は拡大し、財政負担がさらに増すことになります。この辺り、財務省と総務省はどう考えているのでしょうか。「国土の均衡ある発展」とは、見えない連結経済を俯瞰した、古くて新しい言葉だと思います。