SBIの 北尾CEOさん の一連のインタビュー記事を読んでの感想です。
「地銀連合構想」の中核は、小規模地域銀行の中央組織とワタシなりに解釈しました。
「システム構築や有価証券運用、海外進出を支援することで、企業価値を上げていく考えを示した。」(ブルームバーグ、10月8日)
まさに信用金庫業界における信金中金、信用組合業界での全国信用組合連合会の役割を演じるということで、納得感があります。
ところで、
日本経済新聞が最近地域銀行103行に対して行った調査では、
「多くの地銀は将来の事業モデルについて、融資やコンサルティングによって地元の中小企業の成長を支援するリレーションシップバンキング(地域密着型金融)を掲げた。」(10月2日記事)
だそうです。
まったく違和感なしです。
地域銀行である以上、経営理念に合致したリレーションシップバンキングを外すわけにはいきません。それを放棄したら地域のお客さんから捨てられることは必定です。
大変失礼ながらSBI が直接、リレーションシップバンキングに取り組むことは容易ではないと思います。
ただ、筆頭株主としてガバナンスを効かすこと、「投資先の地域銀行の経営陣が本気度を持ってリレーションシップバンキングを遂行するか」を厳しく監視することは難しくありません。
地域金融機関、とくに小規模の場合、経営トップ次第で良くも悪くもなります。
実際、全国を見渡しても、厳しい景況感の中で、粛々と成果を挙げている地域金融機関はトップの力量が優れているところです。
リレーションシップバンキングが儲からないというのは正しくありません。お客様との信頼関係の再構築や従業員の意識改革のための時間軸は必要ですが、組織的継続的対応を行えば、リーダーシップのあるトップのもとで地域金融機関は蘇るのです。
逆に苦境に陥っているところは経営者の能力不足に尽きます。こういう経営者は「マイナス金利や人口減」を言い訳にして竦んで動こうとしません。安易なノルマ主義のプロダクトアウトでヒューマンアセットを崩壊させて、挙句の果てに身の丈に合わないリスクテイクで有価証券運用などで大穴をあけています。それでも責任を取ろうとしません。無責任で矜持もへったくれもない。
こういう経営者のもとでは、一番大事な地元での預貸業務で成果が出ることはありません。
老婆心ながら、SBIがやるべきことは「出資先の地域銀行の経営陣に果たしてリレーションシップバンキングを遂行できる力があるかどうか」を筆頭株主として、厳しく見極めることだと思います。
報道によれば、すでに両手に上る地域銀行がSBIとの提携に前向きとのこと。
SBIに出資をあおぐような地域銀行の中には、経営者の力不足で厳しい状況にはまっているところが少なくないと推察されます。こういう銀行の場合には、企業価値向上のために、まずは外部人材の招聘を含め経営陣を刷新し、リレーションシップバンキングの再構築を行うことが必須と考えます。
繰り返しますが、リレーションシップバンキングは良い経営者に任せれば、必ずや実績につながります。
SBIさん、まずは主要株主として有能な経営者を選んでください。それが地域銀行のバリューアップの王道です。
余計なお節介ですが、思うところを書きました。あしからず。
コメント
SBIが地域銀行の「セントラルバンク」としての役割を果たすという気概は伝わります。
ただ同時に、提携を希望している銀行、そしてSBI自身も「時間軸」という概念を考慮していないのではないかという懸念も感じております。
リレバンが収益に繋がるまでに、かなりの時間を要します(私の経験則では1社につき最低3年は必要です)。
「三方良し」は同時には叶いません。優先順位を間違えると全ては水泡に帰します。
SBIと正面から対峙し、これを手段として使いこなす力量のある経営者が求められます。そのベースとなるのは、地域への強い想いや、共感を生み出す理念でしょう。地域金融機関の変革を期待したいです。
SBIが単なる純投資として振る舞うのか、株主ガバナンスを効かせる(効かせなければならない時点でこういう事態を招いた経営陣は入れ替えなければならないと思うのですが・・・)のか。ここは島根銀行をみていく他ありません。
非常に重要なことは、しつこく繰り返しますが優先順位です。優先順位付けをした時点で、優先されるものは指数関数的に推進されやすく、劣後されるものはその逆で関心が薄くなりやすい。優劣判断こそ、「やる気」を引き出し、「諦め」をまん延させやすくします。