本日の日本経済新聞の記事、「地銀再編 様子見が7割超」を見て感じたことを書きます。
~ 地方銀行で将来の合併や経営統合をめぐる方針が割れていることが日本経済新聞の調査でわかった。可能性を含め再編を模索する地銀は25行で全体の4分の1だった一方、7割超は「再編を検討していない」と答えた。少子高齢化や地域経済の衰退、超低金利で地銀の経営環境は厳しさを増す。金融庁は将来の経営戦略を具体的に描くよう地銀に迫っているが、大半は現時点で「様子見」の姿勢であることが浮かび上がった。(本文より)
ワタシはこの調査を行なった時点がポイントだと思っています。
おそらく調査のタイミングは千葉横浜パートナーシップ (CYP) の発表後だったのでしょう。
言うまでもありませんが、“再編”は経営統合や合併のような資本統合です。一方、資本統合をせずに効率化とトップライン増のシナジー効果の二兎を追うのが業務提携/連携です。
千葉銀行は資本統合を行わず、 TUBASAアライアンスや武蔵野銀行との包括業務提携 (CMA) で着々と実績を上げています。
それに対し、資本統合している地域銀行からはその効果がなかなか出ていないというのがワタシの印象です。
地銀の雄である2つの銀行のうち、業務提携を進めてきた千葉銀行と、資本統合の形態を取った横浜銀行とが、資本提携ではなく業務提携を選択したことは地域銀行業界に大きなインパクトを与えたと思います。
このアンケート調査、CYP 発表以前だったら、再編模索と様子見の数値が逆転していたのではないでしょうか?
コメント
資本統合の大義は「過当競争だと地域に貢献する余力がない。よって統合することで競争がなくなり、余力を地域貢献に振り向けられる。競争概念を変えなければならない」という実にステキなものでした。
ところが統合後はどうだったのか。
ある地銀では、「与信残高5000万円以下の事業者からはもう決算書をもらわなくてもいい」という絶縁通達がありました。後日、「決算書はもらってもいいが、『余計なこと』(???)はするな」という通達に変更になりました。
ある地銀では、「これから無借金会社を開拓します」と金融庁に説明するものの、地元の事情通に聞いてみると「目先の業務粗利に効くカードローン攻勢で、多重債務者を増産している」と。これは何なのでしょう。
せっかく捻出した「余力」を惜しんで、さらに目先の収益策にドライブを駆ける近視眼経営に拍車が掛かっているのです。
これは予想通りです。競争終結論者はデータに汚染されすぎ、最も大事な「人間の洞察」が足りていないのです。性善説に立ちすぎているのかもしれません。
資本統合をすれば、株主、アナリストからの「統合効果の検証」という短期的な視線圧力を感じずにはいられません。結果、短期的成果を出すことが至上命題になるため、「余力を振り向ける」という大義は、ほぼ間違いなく優先順位において劣後します。
本当は経営統合で地元のために余力を振り向けたいところなのですが、株主やアナリストの視線が甘利にも厳しいので、まずは「統合効果」を優先するのが正しい、という認知的不協和を起こしています。
このブログで繰り返し申し上げますが、長短金利差を前提とした、規模拡大のトランザクションバンキング成功モデルは、もはや過去のものです。
長短金利差を望めませんし、トランザクションはデジタライズで急激な自動化を迫られ、銀行員の給与が最大の懸念要因となってしまいます。統合をしようと、このウェーブは変わりません。
それをノルマ&モノ売り営業に転化して、顧客に迷惑をたたきつける「カロリー金融」を長らく続けてきましたが、これも必ず限界を迎えます。
顧客から課題や悩み、煩わしさや不安を取り除くことで、長期継続安定利用をしてもらうことで収益につなげるビジネスモデルに転換しなければ、持続可能ではありません。
「様子見」(⇒おバカさん)なんじゃなくて、気づいている地銀が「7割」の中に結構、含まれているんじゃないかと、最近の取材を通じて、肌感覚で感じ始めています。
未来投資会議に呼応し、地銀合併の世論を作ろうとした日経さんは、地銀の反応に面食らったと思います。
様子見が7割との分析ですが、橋本さんの仰る通り、様子見ではなく、合併なんかやらないとの NOの地銀が増えているんじゃないですか。
そうじゃなくて合併の方がいいんだよ、との論調をどう組み立てていくのか。今後の日経さんの取材に期待しています。
このブログで、ずっと主張していますが、資本不足による救済目的以外に地域銀行の再編はあり得ません。
地域銀行の経営者がまともである限り、、、