昨年後半、金融庁から地域銀行に対して、しばしば出されたメッセージは、
「思い切ったコストカット」と「新しいビジネスモデルの構築」
の両輪でした。
まったく違和感はありません。
ただ二兎を同時に追うことは難しいように思います。
「コスト削減によるスリム化の局面では新しいアイディアは生まれてこない。この局面において大事なことはリストラを『短期的にスピーディにやること』、さもないと現場は疲弊し失速する。」
これは、かつてワタシに地域金融経営の勘所を教えてくれた地方銀行トップの経験に裏付けられた言葉です。
これは10年ほど前に聞いた言葉なのですが、当時と比べると経営環境がはるかに厳しくなっている中で (とくにヒューマンアセットの劣化とリレーションシップキャピタルの毀損が激しい)、大胆なコスト削減を“迅速”に実行することの難易度は極めて高いと言わざるを得ません。
経営トップ対する現場の信頼感がない状態で、これをやることは組織の空中分解を招くことになりかねず、まずは求心力のある経営陣に入れ替えることから始めねばならないと考えます。
コメント
時代遅れにならないためには、スクラップ&ビルドが不可欠です。まずはスクラップから入らないと、ビルドのエネルギーが生まれません。スクラップは短期間にトップダウンで行うことができます。一方、ビルドはボトムアップで時間がかかります。時間軸が重要だと思います。
規模の拡大により経営基盤の強化やコスト削減を進め、自己資本比率などの健全性を確保することが金融再編の狙い(1/5付日本経済新聞きょうのことば)なのだそうですが、単に規模を拡大したからといってそれが直ぐに経営基盤強化やコスト削減に繋がるものではありません。
そして健全性の確保自体は決して「目的」ではないはずです。
以前アネックスで、銀行の存続する「目的」が収益そのものであれば「例え地域が疲弊しても存続する強い企業を目指す」を経営理念にするべき、とコメントさせていただきました。
また先月、遠藤長官は共同通信インタビューで再編加速に期待を示しながらも、地銀は地域経済の発展に貢献する責任がありそのためには健全性を維持する必要があると説明した上で「経済が疲弊して地銀だけが生き残っても何の意味もないというつもりで再編を」と語っております。
全くその通りで、再編は企業として生き残る手段の1つであることに変わりはありませんが、そのこと自体は「目的」ではなく、あくまでも手段です。地元企業・個人顧客に貢献できるものでなければ全くの本末転倒であり、その為に必要なものは正に「優先順位と時間軸」という概念です。
いつもの如く話が脱線してしまいスミマセン(笑)。
今年もよろしくお願いいたします。