🚩引当金特例には再生屋の存在が前提

今回のコロナ禍の影響で地域経済は壊滅的な状態となっており、今後多くの中小小規模企業が業況悪化、放置しておくならば、廃業増、倒産増を想定せざるを得ません。

地域金融機関は、融資先の廃業増により収益基盤が縮小し、融資先の業況悪化による引当金増加を余儀なくされ、赤字決算も覚悟しなければならないところに追い詰められるでしょう。

金融機関のリスク管理の視点からいうと、コロナ禍は閾値(99%とか、99.9%とか)からはみ出した非常時であり、そこで発生するであろう非予想損失(UL= Unexpected Loss)は引当金ではまかないきれず、資本を充当しなければない状況です、今は。

公認会計士協会は「新型コロナウイルスの感染拡大で融資先の業績が悪化しても、銀行が引当金をただちに積まないといった判断を容認する。」(4/23、日本経済新聞「貸倒引当金、判断柔軟に」)との方向性を出していますが、コロナ禍に巻き込まれた融資先に対し傍観者的な姿勢をとる自己中心のレイジーバンクにはこの特例は適用すべきではありません。

引当金を積まない以上、融資先への「本業支援、経営改善、事業再生」(リレバンの基本です)の対応は必須だからです。

それによって、事業の継続を促し(廃業予備軍から引き戻す)、ランクダウンに歯止めをかけて、引当金を積まなかったことを正当化する必要があるのです。

引当金を積まない場合はもちろん、引当金をきっちりと積んで赤字(資本の毀損)を覚悟で臨むにしても、長期化するコロナ戦争を戦い抜くには、資金繰り支援にとどまることなく、本業支援から経営改善/事業再生まで踏み込んでいかねばなりません。

大事なのはこれを担う人がいるかどうかです。

いよいよ経営改善/事業再生のスキルの高い人たちの出番です。

しかしながら、地域金融機関において経営改善/事業再生に関わる人材の層は薄く、従来この仕事がキャリアパスとして高く位置付けられている組織はリアケースです。特殊な職人集団との扱いをうけているケースがほとんどではないでしょうか。

こういう人材は多くの地域金融機関の組織内では主流扱いされていませんが(それどころか“冷や飯食い”扱いのところもある)、どこの組織内にもこの仕事に使命感とプライドを持って粛々と頑張っている人たちはいます。

「そういう人たちを結びつけることでうねりを起こす」、これこそが、1月18日に松江市で行われた再生人シンポジウム(主催:島根県信用保証協会)でした。

シンポジウムの第二弾(4/18@諏訪市)以降はコロナ禍で延期になっていますが、先の見えないコロナ戦争の中で、リレバン人材や企業再生屋たちは各組織内で急激に存在感を増していくことは間違いないでしょう。

そうならない金融機関には「引当金の特例」を認めるべきではありません。

★追記:

こちらの方も是非ご高覧ください。

明日の企業再生人シンポジウム、松江に向かって、空路、鉄路、さらには陸路 (何と長駆 数百キロ) での大移動が始まっているようです。 ...
大盛況でした。
3人のパネリスト、アップで。 地域金融機関がこういう方たちの思いを共有できる集団になれば、地域金融機関は蘇り、地域は間違いなく良くな...

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コメント

  1. 奥山真司 より:

    シンポジウム第二弾(4/18@諏訪市)は残念ながら延期となっております。
    1月の松江に続け!ということで早期開催することがベストであったとは思うのですが、今はちょっと違う感覚です。

    それはまさに過去最強の敵であるコロナ禍を乗り越えた時に開催するシンポジウムに大義があるのではないかと感じています。サミットのテーマも、もちろん「リレバン」「アフターコロナ」「再生/M&A」等、第一回シンポジウムに無かったキーワードも見えております。

    今、全国で事業者のために活躍している金融機関/保証協会/行政の皆さん、めっちゃ大変ですが一緒に乗り越え、更にパワーアップして第二回シンポジウム “Suwa リレバンサミット”でお会いしましょう!

  2. qzs04203 より:

    奥山さん、

    諏訪サミットはコロナ戦争後の凱旋サミットということで、楽しみにしています。

    多胡

    • 奥山真司 より:

      多胡先生
      おっしゃる通りです、”凱旋”サミットです。
      松江に集結した同志と新たな同志が誰一人欠けることなく乗り越え、凱旋サミットでお会い出来ることを楽しみにしております!

  3. 高見守久 より:

    多胡先生のおっしゃる通りです。リレバンの基本の「融資先への本業支援、経営改善、事業再生」は、直ちに成果が上げることは難しいものです。地域金融機関にとっては、腰を据えて、それ相応の引当金を積んで、経営支援をするのが本来の姿です。私自身の経験からみても、金融機関内の地位は肩身の狭いものです。ただし、新型コロナウィルス感染症(COVID-19)対策においては、全国の地域金融機関が同じ土俵ですので、全国的に比較可能であり、レイジーバンクという地域金融機関自体もそこに属している役職員もレイジークラークとしてレッテルを貼られることになるでしょう。全国の地域金融機関行職員にお願いしたいことは、新型コロナウィルス感染症による巣ごもりの間に各融資取引先への経営再建や事業再生に貢献できるよう、自己研鑽を積んでいただきたいものです。