膨れ上がったコロナ関連融資の中で、貸し手にとってリスクのないゼロゼロ融資(国の予算、地方公共団体の予算)の残高が圧倒的に多いことは周知の通りです。
〜全国信用保証協会連合会によると、実質無利子・無担保融資を含む民間金融機関による融資への保証承諾額は4~11月で26兆4725億円と前年同期の5倍となった。件数も145万9970件と同3.5倍に増えた。いずれもリーマン・ショックが起きた08年度をすでに上回っている。3月末から11月末にかけての銀行と信用金庫の貸出残高の増加額は約28兆円となっており、中小企業向け融資の伸びの大部分を信用保証協会の保証が支えた構図が浮かび上がる。(本日の日経新聞「企業倒産コロナ禍でも減」より)
ゼロゼロ融資先であっても既存の融資残高があり、プロパー融資や責任共有の保証協会保証つきのものもあり一概には言えませんが、ノーリスクということでゼロゼロ融資の出しっ放し、そのあとのフローアップが欠如している地域金融機関が多いことは大きな問題です。
12日のブログ「営業利益改善支援活動」に書いた通り、ゼロゼロ融資は一時的な止血剤に過ぎず、借り手の粗利益改善のための手を打たない限り、時間とともに血が流れ始めるからです。「2度目のコロナ融資」「おかわり」などという話が年末年初から流布していますが、止血剤が切れてきたことに他なりません。
ゼロゼロ実行後、直ちに借り手の粗利益改善支援の“組織的継続的”な取り組みまで踏み込んだ地域金融機関はどれだけあるでしょうか。
さらに言えば、信用保証協会の中には保証して一丁上がりという姿勢のところがある(それもマジョリティ)のには愕然とします。平成30年の信用保証協会の業務見直しで経営改善・事業再生の支援の重要性が増しており、借り手(保証先)への粗利益改善支援は保証実行と同時にアクションを起こすべきですが、協会によって取り組み姿勢に差、それも“著しい”差があることは由々しきことです。
金融機関も信用保証協会も、100%保証付融資が実行されたときがスタートラインとの意識が欠如しています。
このことが地元事業者の倒産・廃業へとつながり、それが金融機関や信用保証協会の基盤崩壊へとブーメランのように戻ってくるのは自明の理です。
であるからこそ、地域屈指の人材、情報、ネットワークを持つ地域金融機関であれば、事業者の「粗利益改善支援」を最優先施策とすべきです。
今年の4月からの新しい中期経営計画の構築に忙しい地域金融機関(信用保証協会も?)は多いようですが、このことをお忘れなきよう。
コメント
よく「原点に返って取り組んで行く」と言われます。
このコロナ禍の世の中、それぞれがよって立つ法の目的を再確認し、顧客・会員・組合員のためにやるべき具体的行動方針を定め、一先一先に確かな活動をしてかなければなりません。お仲間間での業績の優劣を競うのでなく。
『粗利の改善』は地方においては本当に大切な企業支援のスタンスだと思います。『甘い』と思われる方もいらっしゃるかと思いますが
単にムダをなくして生産性を上げましょう。の結果が『ムダな人員の排除』では、やっぱり田舎は立ち行きません。
地方においては教科書的には変動費になるだろうパートさんのお給料も、ムダだと言って簡単にリストラすると
長い目でみると必ずしっぺ返しを食らいます。やはり売上を上げたり、原価を下げたり、原価ロスや機会ロスを減らしましょう。と言った打ち手が1丁目1番地ですね。
私は金融機関に入る前は、再生会社の舵取りを直接何度もやりましたが、安易な値引きと、効率化という名の首切りは、瞬間最大風速は吹きますし、金融機関好みなのかもしれませんが
経営判断や組織の思考力に粘りを失わせる(行き詰まれば、値引きや首切りにすぐに思考が回る)危険もあるんです。
金融機関が短期の書換をする条件として『リストラ』を強要されたことが2回ありましたが、両方とも、その会社はその後破綻しました。
東京の会社のような空中戦が主体のところは知りませんが、『顔の見える』地方では、特に協業による粗利の改善に、企業も金融機関も目を向けるべきだと思います。