本日の日経新聞の一面に、大手生命保険会社が保有する地銀株を削減するとの記事が出ています。
https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20210606&ng=DGKKZO72634450W1A600C2MM8000
~日本生命保険は40行超の株式を売却することを決め、売却予定の地銀に既に通知をした。売却対象は地銀の収益力や保険商品の営業力などを通じて判断する。保有株のすべてを売却するケースと、一部を売却する例に分かれる。ふくおかフィナンシャルグループなど稼ぐ力が相対的に強い大手地銀には売却の通知が届いておらず、選別が進んでいる。第一生命も一部の地銀の売却を既に決め、今後順次通知する。(記事より抜粋)
記事から判断する限り、売却基準は、
~“地銀の収益力”という「機関投資家としての経済合理性」と、
~“保険商品の営業力”という「保険業務の営業協力度」、
という2つにあるようですが、大事な視点が欠落しています。
それは「地銀による地域のサステナビリティへのコミットメント」の視点です。
昨今、生命保険会社は他の多くの機関投資家と同様に、ESG/SDGsへの取り組みに熱心であるとの報道がなされています。
生命保険会社の直接的な株式投資先である上場会社や大企業、一部の中堅企業に対する取り組みは分かるのですが、小規模中小事業者(日本の事業者の99%を占める)さらには地域経済・社会となると、そのサステナビリティ(ESG/SDGsの観点からも含め)を担っている“はず”なのは、地銀などの地域金融機関です。
生命保険会社がESG/SDGsを標榜するのなら、そういう地銀の株を保有してバックアップするという考え方があるのではないでしょうか。
さらに言えば、生命保険会社の取り扱う保険商品や年金商品の契約者は地域における個人であり、小規模中小企業なのです。地域のサステナビリティに支障をきたすと保険や年金どころではなくなり、自ずと生保の商品販売に影響が出てきます。
実際のところ、地域顧客(法人も個人も)をしっかり支えている「顧客本位の地銀」と、目先の収益を追うだけの「自己中心の地銀」の二極化現象が起きており、コロナ禍でこれが加速しています。
短期的収益に目が眩んだ自己中心の地銀のもとでは、地域のサステナビリティを維持することは容易ではなく、こういう地銀の株式を売却することにはESG金融の観点からもまったく違和感を感じません。
自己中心の地銀はコロナ禍でも資金繰りと支援と称し、事業者を借金漬けにして、そのあとの本命といえる事業者の事業変革支援には目を向けません。レイジーバンクです。こういう銀行の株はさっさと売却すればよろしい。
それに対し、真の意味で地域を支えている顧客本位の地銀の株を売ることは生保自身の首を絞めることになるとの認識を持つべきだと思います。
自己中心の地銀か、顧客本位の地銀か、
これを見分ける情報は生命保険会社の現場の支社や営業所の職員さんたちの中にたくさんあると思いますよ。
地銀株の売却にあたっては「地銀による地域のサステナビリティへのコミットメント」という視点をお忘れなく。
★参考までに:
地域金融機関のサステナブルファイナンスはこちら。