3日の日経朝刊「地銀、公的資金が促す再編」を読んでの感想です。
https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20210703&ng=DGKKZO73545710S1A700C2EA4000
旅芸人ブログでは、
「自己資本に問題がない限り、再編(合併や持株会社形式などの経営統合、すなわち資本統合)は起こらない」
というスタンスで発信しています。
↓4年前の投稿ですが、この考え方は基本的に変わっていません。
この後、労働集約型の地域密着型金融(リレバン)を進める上でマンパワーが足りなくなり、同一地域内で思いを同じくする金融機関との合併に踏み切ったというケースがありますが、これは稀有な例です。
さて、
地銀の経営理念の柱は、多少の表現の違いはあるものの「地域経済社会の発展への貢献」だと思います。
自己資本が不足したら、経営理念に合致した業務運営はできません。
「自己資本に懸念を持っている」地銀経営者が、公募増資の難しい状況下で公的資金の導入や再編による資本充実を考えることは至極当たり前のことなのです。
この日経記事では「地銀の規模」、「SBI」という2つの要素で地銀再編を分類しています。
~地銀の再編は今回のような「上位行以外の地銀同士」のほか、「SBIホールディングスを中心とした連合」、「上位行を軸にした連携」の3つに大きく分かれる。(同記事より)
たしかに、規模の小さい地銀には自己資本に懸念を抱えているところは少なくないのですが、規模の小さい地域金融機関でも鉄板の自己資本を持つところもあります。
また、規模が小さくてもアライアンス/シェアードサービスで合併・経営統合と同等の効果を上げることができます。
さらに、合併・経営統合(資本統合)による金融機関同士の利害調整・合意形成 (ヒトとヒトのぶつかり合いの陣取り合戦で、道理や正論が通る世界ではない) などに多大な時間と機会費用を浪費する弊害、さらに長年貯めた純資産の半分以上を負ののれん代として統合先に献上することを勘案すれば、あえて資本統合に踏み込む選択肢はありません。
その一方で、「業務提携ではシェアードサービスなどの効率化は遅々として進まないから、一歩踏み込んで合併・経営統合すべし」という根強い意見があることも否定できません。
「本業利益を拡大させていくには、提携から一歩踏み込んで合流する必要があると判断した」(フィデア入りする東北銀行頭取のコメント、7月2日の日経)もそのたぐいですが、それは業務提携の本気度が足りなかっただけのこと。
業務提携に問題があるのではなく、経営自身の問題なのです。
資本に懸念がないのならば、業務提携(経営統合につきものの弊害部分はない)を徹底的に究めることが先です。
最近のメディアの論調では「再編の中に連携を含める」ようなところがありますが、連携・業務提携などは昔から普通に行われていることであり、再編に組み込むことは“こじつけ”のように思います。
ですから、日経記事での地銀再編の分類、
「上位行以外の地銀同士」/「SBIホールディングスを中心とした連合」/「上位行を軸にした連携」、
はワタシには違和感があります。
地銀再編を決めるかどうかは、「経営者の自己資本への懸念」があるか否か、にしかありません。
日経記事の分類には「SBI連合」がありますが、これも「自己資本に懸念があるからSBIに資本を仰ぐケース」と「SBIの持つ機能への期待によるもの」とに分けるべきと思います。