20年ほど前に「地域金融ビッグバン」(日本経済新聞社)など、地域金融関係の本を何冊か書いたのですが、その中で、
地域金融機関の未来図を、顧客の「問題解決業」、顧客への「感動体験提供業」と予想しました。リレバンはそのための手段と位置づけました。
「問題解決業」の方は、多くの地域金融機関が「課題解決業」「コンサルティング業」などと言葉の違いはあれ、今や当たり前のように使っていますが、「感動体験提供業」の方は残念ながらフェードアウトした感があります。
「感動体験提供業」というのは、地域の魅力研究所を一緒に立ち上げた北白川さんの言葉です。北白川さんの論考は地域の魅力研究所のメンバーで上梓した「地域発! 日本再生」(2012年6月)に中にもあります。
本日の日経電子版「阿波銀行、組織改善へコンサル導入 従業員の士気高める」を見て、そのころの記憶が蘇りました。
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCC121R20S1A910C2000000/
~従業員の満足度を重視して組織を改善する手法を導入した。このほど約2100人の全従業員を対象に約140項目に及ぶ意識調査を始めた。「顧客の感動満足を高める職場づくり」を目指し、まずは従業員の自行への期待度や満足度を測り、組織の課題をあぶり出す。(記事より)
「顧客の感動満足を高める職場づくり」、さすが、切り口が違います。
コメント
多くの企業は顧客満足を掲げますが、実は顧客満足が成り立つ前提のひとつに従業員満足があることを意識しているところは少ないと感じます。
従業員が明るく快活に仕事ができる環境(明確な戦略や器のあるトップ、報酬体系、ワークライフバランスなど)を伴わずにお客さんによい提案ができるはずはなく、まして心からの共感を得ることは難しいと思うのです。
一方、問題解決に加えて顧客と感動体験を共有すると、お客さんは感動をいろんな場でついつい口にして自ずと宣伝を手伝ってくれますし、行員は感動体験の蓄積によりリレバンプロとしての引き出しが増えることでしょう。
珍しい試み(であること自体が情けない!)が行内でうまく機能し、健全な競争を通じて業界に伝播することを少しは期待しています。
北白川さんのご指摘はもっともなものと思います。感動体験を顧客に提供するには行員が感動体験を自ら仕事の中で見いだせねばなりません。では職場で仕事の感動体験がどうすれば増やせるのか? それは感動を体験したと思う行員に銀行内でそれを他者に手軽に発表できる機会や場を提供することが大切です。そして役員はそれを積極的に評価します。そうすれば同僚の感動体験を自分もやってみようとする者が増えるのです。これは従業員満足の改善方法そのものでもあります。
追伸)
考えてみれば、橋本編集委員の「捨て銀」シリーズは、この感動体験を全国に共有させるところが人気のミソなのでありまする。