~「2つの銀行の取引先の大部分が重なる」のだとしたら、合併銀行にとって大きな課題となるのは、余剰となる行員の処遇であることは間違いありません。とくに最近の合併地銀では、資本統合比率で劣位にある銀行の行員の早期退職が顕著なようです。この数十年、地域金融機関の合併事例を見ているのですが、ワタシの知る限り、余剰人員が問題にならなかったケースはひとつしかありません。この金融機関のビジネスモデルは、労働集約的リレバンの全職員運動と持続性であり、かつ基盤とする地域には事業者数が多く、新規創業の兆しもあります。この金融機関の合併の主たる理由は「リレバンのための人員増強」です。
2022年2月14日のブログ「どうする、合併による余剰人員」の一部です。
この金融機関は合併して数年が経過しますが、人員リストラはなく、労働集約型ビジネスに更に磨きをかけ、お客さまのニーズに応えていくという合併目的通りの成果を上げています。
さて、
昨日発表された長野県地銀の経営統合ですが、報道の内容を見る限りは、上記の合併と同じものを感じ取りました。
昨日夕刻の日経電子版には八十二銀行と長野銀行の頭取会見のやりとりがありますが、松下頭取の発言から注目ポイントを列挙してみます。
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCC28APC0Y2A920C2000000/
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~中期経営ビジョンの達成には人的資源の強化が不可欠だ。
~業務提携なども考えられるが中途半端では駄目だ。
~銀行法の改正などを受けて我々は投資専門子会社など様々な子会社をつくってきた。地域の高齢化が進むなかで信託業務などにも力を入れているが、人材が不足している。
~人的なリストラは全く考えていない。
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冒頭の金融機関の合併は「リレバンのための人員増強」が目的ですが、八十二~長野は規制緩和等により銀行業務の範囲が広がるなかでの人員増強と読み取ることができます。
いずれも、言うは易く行うは難し、です。でもやるしかない。
既存業務の深掘り、さらにいえば地域密着型金融の原点回帰という視点からの人員増強と、銀行業務の多様化に対応した人員増強との違いはあるものの、人員リストラがチラつかない統合合併は暗さを感じさせず、ホッとします。
異文化融合という合併での最大のハードルは、人員リストラで高くなります。
地域金融機関は地域における有力な雇用の受け皿ですから。