10年間にわたる金融機能強化審査会(公的資金を導入した地域銀行向け、金融庁)において、
公的資金による資本が地域における金融機能強化のために適正に活用され、地域企業・地域経済の持続的発展へとつながり、それが地域社会に資するか(雇用の確保など)について厳しく見ていました。
と同時に公的資金の返済についての目配りも行っていました。
後者重視で前者を疎かにすることは本末転倒なのですが、後者に強く傾きそうな力(銀行の健全性が強く出過ぎ)が働くことも往々にしてあり、そこにブレーキをかけることも少なからずありました。
後者、すなわち公的資金の返済については、第三者割当増資で対応する可能性は常に考えていましたが、そのためには前者にしっかり取り組むことが必須となります。
前者、質の高い金融機能をお客さまに提供すれば、お客さま、さらには地域にとってなくてはならない金融機関との評価が浸透し、第三者割当増資のハードルがグッと下がります。
バブル崩壊による資本の毀損から、かつて多くの地域銀行は地元において第三者割当増資をお願いした経緯がありますが、その後の株価は芳しくなく、地域株主には借りを作ってしまったとの意識が強いように感じます。
この負い目を吹き払うには、地元取引先への質の高い金融仲介(経営支援、事業再生支援も含む)をやり続けるしかなく、質の高い金融仲介に対する地元からの「評価と今後の期待」のあかしが、第三者割当増資なのです。
健全性の美名のもと、返済原資の積み上げが前面に出るような自己中心の金融機関では到底できない技です。
金融機能強化法の公的資金を導入する13銀行のなかで、金融機能強化(前者)の本質を追求した2つの銀行が第三者割当増資により、公的資金の繰上げ完済に至ったことは喜ばしい限りです。
◯宮崎太陽銀行
https://www.yomiuri.co.jp/local/kyushu/news/20220303-OYTNT50041/
◯南日本銀行
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOJC059KT0V00C21A7000000/
この2行に加えて、今年度、第三者割当増資を発表した地域銀行もあります。
公的資金導入銀行ではありませんが、頭取の英断で伊藤貢作さんを招聘するなど、現場の経営支援力のレベルアップに注力、地元事業者の評価は上々です。
島根銀行です。
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCC117V00R11C22A1000000/