長崎の統合合併は特殊事例

長崎県のトップ地銀である「十八銀行(本店長崎市)」が福岡に本社を構える「ふくおかファイナンシャルグループ(FFG)」の傘下に入り、すでに同グループ下にある「親和銀行(本店佐世保市)」と合併する話がこのたび無期延期になりました。

この統合合併が今後の地銀再編を占う意味で非常に重要であるとの報道が多いのですが、まったくもって理解に苦しみます。この統合合併はきわめて特殊な事例だからです。

本件では「公正取引委員会が問題にする合併銀行の7割シェア」が論点となり、貸出債権を他の銀行に譲渡するという顧客本位とは逆行する展開を見せたのですが、その点を論ずる以前での大事なポイントがあります。

そのポイントは地方銀行の経営理念に関わる一番大事なものですが、新聞報道などでほとんど指摘されていないことに異常性を感じます。

実はこの合併によって「長崎のすべての銀行が県外資本になる」ことが最大の問題です。すべての銀行が県外資本となるのは前代未聞です。

FFGの外人株主比率は29% (本年3月末)と地域銀行では屈指の高いレベルにあり、経済合理性の間尺に合わない施策は容易に受け入れ難いと考えるべきでしょう。そうなると自ずから長崎県のミドルリスク層(業況が必ずしも芳しくない事業者など)での金融排除の可能性が高くなるものと思います。

そもそも長崎県のお客様とのビジネスで140年かけて積み上げた資本は十八銀行が地元長崎のお客様とのビジネスを行う上での土台となるものです。すなわち不芳な企業や過疎地の事業者への融資、ならびに事業再生のための貸付債権のカット等を行うには「備え」が必要であり、その「備え」である資本は地元経済の根底を支える大切なお宝です。

その資本が県外のコントロールとなることに地元はもっと危機感を持つべきではないでしょうか。

もちろん厳しい経済環境の地域内に同じ規模の銀行が2つあってチキンレース状況になっていることに地元が危機感を持つことに違和感はありません。

「地元を支える確たる銀行が必要」

新聞等には地元財界人などの意見が掲載されています。もしどうしてもそうしたいのならば、十八銀行は地元で資金を募るなりして、FFGから親和銀行を買い戻し、長崎県民銀行を作ることが回答です。

長崎県民銀行を作るという観点に立つことで初めて「7割シェアの是非」が俎上に乗るのです。

これからの地銀再編を占う意味でのモデルとなるのは長崎県民銀行となった段階からのことです。

現段階でモデルになるのは長崎ではなく新潟 (第四銀行と北越銀行) です。

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