「御社の存在意義、何ですか」
本日の日経朝刊の一面トップの記事のタイトルを見て、5ヶ月ほど前の日経電子版のソニーの記事を思い出しました。(ちょうど時を同じくして、ある会合でソニーの変革の話を聞き、感銘を受けていました)
御社の「志」はなんですか? 問われるパーパス定義 (杉本編集委員 2021/7/4)
https://www.nikkei.com/article/DGXZQODK30DY4030062021000000/
〜年間の純利益が初めて1兆円を超えたソニーグループ。吉田憲一郎会長兼社長が就任して3年での成果と強調したのは、業績ではなく「ソニーのパーパスを定着させたこと」だった。企業にとってパーパスとは何か。「存在意義」と訳されることが多い。吉田氏はソニーのパーパスは「世界を感動で満たす」ことだという。
〜近年は米国に続き日本でも「会社は誰のものか」の論理で株主の利益が優先されてきた。資本主義の原理ではあるがどうしても経営が短期視点になるなど限界も指摘される。より根本的に「会社はなんのためにあるのか」を問い直し、そこに経営の軸を置くのがパーパス経営の本質だろう。
〜ソニーの場合、いわゆる物言う株主から映画や金融の切り離しを迫られてきた。コングロマリット(複合企業)の非効率性が解消されて株主価値を高めるとの論理だ。経営陣が出した答えは真逆だ。金融は完全子会社化し、グループ一体の経営を打ち出した。家電や映画、ゲーム、音楽などが一体で顧客に感動を与えることがソニーのパーパスだと定義したからだ。まだ道半ばであり、吉田氏は「感動経営」が長期的に会社の価値を高めると示す必要がある。
(当該記事より)
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二十年ほど前に地域金融機関の未来は、地域における「問題解決業」/「感動体験提供業」であると発信したことが蘇ります。
昨今、中堅若手メンバーを中心に「パーパス」の議論を行う金融機関が出てきています。
そのメンバーと話をする機会がありますが、そこに巻き込んでもらう高揚感は古稀の身にとっても爽快ですらあります。
コメント
ソニーの前身である東京通信工業株式会社の設立趣意書(井深大氏起草)には、会社設立の目的が8項目列挙されており、その1項目目に「自由闊達にして愉快なる理想工場の建設」という表現があります。
「感動経営」と再定義されているものの、創業者スピリットの重要部分が脈々と受け継がれていることが読み取れます。
創業者の経営理念や価値観の何を活かし、何を捨てるか(あるいは再定義するか)は後継者の大事な仕事です。
存在意義に関わる核心部分を捨てると事業領域の迷走を招きますし、社会経済環境に合わぬものを無理やり残すとガラパゴスに陥りかねません。
ソニーの例でいうと、会社設立の目的の7項目目は「新時代にふさわしい優秀ラヂオセットの制作・普及」となっていて、言うまでもなく令和の時代にそのまま採用することはできません。
創業者の価値観の根幹部分を充分に理解したうえで、現代の市場や顧客を踏まえ、かつ長期的に通用する本質的な議論がなされることが重要と感じます。(パーパス、存在意義、経営理念、クレド等々名前は何でもいいのです)
若手の活発な議論はもちろんいいことですが、もし現在の経営陣が普段から見直しを図る意識を持っていないようであれば、それはそれで大変残念な状況かと思われます。