2002年10月の「金融再生プログラム」。
その後、これが2003年のリレーションシップバンキングのあり方についての検討会議へとつながったことから、ワタシにとっては原点です。
「金融再生プログラム」は、金融機関の不良債権処理と健全性が主要論点になっていた時代に登場しました。
その中で、早期是正措置の対象にならない金融機関であっても、その健全性維持、予防的観点から、「自己資本比率に表されない収益性や流動性等、銀行経営の劣化をモニタリング」する仕組みが導入されました。
「早期警戒制度」です。
16年を経て、いままた早期警戒制度にフォーカスがあたっているように感じます。
「変革期における金融サービスの向上にむけて〜金融行政のこれまでの実践と今後の方針〜 (平成30事務年度)」にも、下記の記載があります。
「地域金融機関が、将来にわたる健全性を確保し、金融仲介機能を十分に発揮していくため、早め早めの経営改善を促す観点から、早期警戒制度の見直しを行う。」(p82)
さて、
1年前に発表された 29年度金融行政方針において、ビジネスモデルの持続可能性等に課題が認められる地域金融機関の中で、とくに深刻な問題を抱えている地域金融機関に対しては、
「バランスシートの健全性に大きな問題が生じていない今のうちに、検査を実施し、経営課題を特定した上で、 経営陣や社外取締役と深度ある対話を行い、課題解決に向けた早急な対応を促す。」(p18)
と記載されています。
大胆な言い方をすれば、これは実質的な (表面自己資本利率は8%を維持していても) 早期警戒制度の適用とも考えられるのではないか、と思っています。
以下はあくまでもワタシの私見です。
「深刻な問題を抱えている銀行」に対しては、以下のチェックポイントでの、ビジネスモデルのモニタリングを優先的に実行すべきと考えます。
→ 顧客本位かどうか (←企業ヒアリング、アンケートによる裏取りも含め)
→ 金融排除から金融包摂への対応を行なっているか (融資方針、リスクテイクの考え方など)
→ ビジネスモデルに持続可能性があるか (→中長期的に銀行の収益につながる)
→ 顧客との共通価値の創造となっているか (CSV)
→ 画一的でない地域特性に合致したものか
→資本が有効に活用されているか (表面自己資本比率からの脱皮)
これらのチェックポイントに着目したビジネスモデルに真剣に着手している(成果はまだまだであっても) 金融機関に対しては、金融庁は徹底的に支援すべきと考えます。これぞ金融育成庁でしょう。
一方、これらチェックポイントを無視している金融機関のビジネスモデルは、プロダクトアウトのトラバンそのものであり、やっているフリのなんちゃってリレバンです。
こういう金融機関には徹底的なコストカット (ヒューマンアセットの崩壊は必至) しか選択肢はありません。
さらに言えば、徹底的なコスト削減を行なっても、AIフィンテックを駆使する異業種の台頭の中で果たして生き残れるのでしょうか?
完全に行き詰まりです。
「経営陣の交代、救済目的の再編」という方向で、金融行政は対処すべきと考えます。
金融処分庁で結構だと思います。