地域銀行の中間決算に関する報道が続いています。
上場80行の2018年4~9月期の連結決算が、最終損益が7割の56行で減益 (赤字の銀行も) となり、かつ有価証券含み益などのバッファーとなる貯金箱も中身が枯渇し、非常に厳しい局面に追い詰められた感があります。
その一方で「負ののれん代」が話題になるなど、経営改革の本質をはずす論点には???です。
〜10月1日、新潟県の地方銀行である第四銀行と北越銀行が経営統合して発足した第四北越フィナンシャルグループ。第四銀が北越銀を合併する形をとることから「負ののれん」約460億円を12月末に計上する予定だ。2018年3月期の両行の純利益合計205億円の2倍以上の利益が転がり込む。銀行を買収すれば、利益が計上できる──。そんな耳を疑うような珍現象が、地方銀行の再編で発生している。キーワードは、聞き慣れない負ののれん。〜
(エコノミスト オンライン 11月5日)
ワタシはこの記事の冒頭の部分しか読んでいないのですが、地域銀行のPBRが低いため (平均で0.4程度)、買収された側の純資産の半分以上が取り崩され、負ののれん代として特別利益として計上されることが趣旨だと思います。
単なる会計処理の話です。
新潟の地銀統合のみならず、この度のFFGと十八銀行の統合合併でも 1000億円に近い負ののれん代が発生すると言われています。9月25日のブログをご参照ください。
さて、旧聞に属しますが、
三井住友銀行が、第二地銀わかしお銀行に買収されるという「逆さ合併」という荒業を使ったことが思い出されます。あの時はぶったまげて、何が起こったのか分かりませんでした。
2002年12月25日の三井住友銀行のわかしお銀行との合併に関するニュースリリースを見ると、「合併差益を活用して有価証券の含み損を解消する」と明記されています。
利益が出るといっても、要は非買収銀行の純資産が取り崩されるだけの話であり、合併による負ののれん代で不良債権処理をするよりは、買収に応じることなく粛々と不良債権処理 (結果として純資産が減少) する方が、経済効果として良いのは確かです。
もちろん巨額の赤字を計上するよりは、この形が良いとの経営判断も理解できないわけではありません。
ところで、負ののれんはさておき、
今決算では与信費用がジワリジワリと増えているのが気になるところです。
「地方銀行の与信関係費用について朝日新聞が公表済み資料から集計したところ、18年9月中間期は計1609億円で、中間決算ベースでは2013年度以来5年ぶりに利益を押し下げた。14~17年度の中間決算では、貸出先の経営改善で引当金がそれほど必要なくなり、『戻り益』として利益に貢献していたが、今年度は逆に引当金を積み増した。
今年はシェアハウス融資の不正問題を起こしたスルガ銀行(静岡県沼津市)が1196億円もの与信費用を計上し、全体を押し下げた面もある。ただそれを除いても412億円で、前年同期の195億円の「戻り益」からは約600億円の費用増となった。」(朝日新聞デジタル、11月16日)
予防的に貸倒引当金を積み上げている銀行は、まさに「フォワードルッキングな姿勢」と大いに評価できるのですが、引き当て余力がなく、竦んでいる銀行もあるのでは?と懸念するところです。