英国の投資ファンド、シルチェスター・インターナショナル・インベスターズによる株主提案は、シャンシャン株主総会が多いといわれる地銀に大きな一石を投じました。
~英シルチェスター・インターナショナル・インベスターズは日本企業に初めて株主提案をし、京都銀行をはじめとした4地銀に増配などの株主還元を求めた。一部の機関投資家が賛同し、岩手銀行や滋賀銀行では賛成率が2割を超えた。(6月29日、日経電子版、「株主提案、最多の77社 脱炭素の要請に2割超す賛成も」)
~シルチェスターは①保有している株式から受け取る年間配当の100%に相当する額②コアの銀行業務からの純利益の50%――を配当に回すことを求めた。これに対して各行は健全性の確保や地域経済への発展の取り組みなどを理由に反対を表明。その一方で、株主還元を強化する方針も打ち出している。(6月29日、「英ファンド、特別配当の提案 地銀4行が総会で否決」より)
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シルチェスターが特別提案をおこなった地銀の株主総会に関する報道で、旅芸人は太字のところに注目しました。
特別提案に対する賛成票2割を多いと見るか、少ないと見るか。
地元投資家や、地域経済社会の持続と発展への地銀の役割(それが地銀の収益へと跳ね返ってくる)を理解する投資家は、銀行側の主張する反対の理由「地域経済への発展の取り組み」が看板に偽りありと判断すれば、賛成票を投じることを肝に銘じる必要があります。
下記の京都銀行の株主総会に出席した株主の発言には全面同意しますが、銀行側は「地域を支える」という意味を重くとらえねばならないと思います。そのために資本をいかに地域経済社会の持続と成長のため活用するか、株主は見ています。
~参加した東京都の会社員の60代女性は「地域を支える役割のある金融機関に短期的な視点から特別配当を求めるのは誤り」と提案に反対したという。(6月29日、日経電子版、「京都銀行への英ファンドの特別配当要求否決 株主総会」)
コメント
私の個人的な見解ですが、シャンシャン総会の現状にこのような株主からの提案があり、波風が立つこと自体は、そんなに悪いことではないように思います。株主による経営への監視、規律は近代会社法制の大前提なので。
そして、ご指摘の通り、「地域経済への発展への取り組み」を具体的にどこまでの範囲で考えるのかが、実質的な議論の中身になってくると思います。好業績を仮に上げているとして、銀行は将来的な景気循環で景気が悪化した時に、事業会社向けの債権を支えるバッファーが求められるはずです。それがどの範囲まで見るべきかが、株主、投資家の見極めのポイントになるように思います。
その一方で、株主としては投資に対する見返り、一定のインカムゲインを得たいところではありますよね。何処までを将来的なバッファーとして、内部に留保し、その余剰を株主に配当するのかが難しい線引のような気がします。
「地域を支える」とは、なんぞやという反論をシルチェスターや他の株主にも期待。