「平時と非常時の峻別は難しいが、ある閾値( 99%でも 99.9%でも構わない) を越える非常時(=コロナショック)において先行きが見通せない場合、金融機関は自己資本で対応するしかない。」
これはバーゼル銀行監督委員会で日本代表として長年にわたり交渉にあたっていた森俊彦さん(日本金融人材育成協会・会長、金融庁参与)の言葉です。
ポスト金融検査マニュアル時代の基本思想は、金融機関の判断の尊重なのですが、
「新型コロナウイルスの感染拡大で融資先の業績が悪化しても、銀行が引当金をただちに積まないといった判断を容認する。政府が銀行に中小企業の資金繰り支援を要請しているのを踏まえ、引当金の急増で銀行経営を圧迫しないよう配慮する。」(23日、日本経済新聞記事「貸倒引当金、判断柔軟に会計士協会、銀行監査で方針 」より)
というような非常時の“負荷”を「引当方法」にシワ寄せすることが(リーマンショック時の金融円滑化法もまさにそうだったわけですが)、果たして得策なのか。
ワタシの意見は次の通りです。(そんな正論なんか聞きたくない、との声は甘んじて受けます)
コロナ禍による地元事業者の業況悪化による引当激増(これは金融機関の本業支援、経営改善/事業再生支援で抑制努力をしなければならない)を予測し、期間収益でカバーしきれなくなれば資本を発動させるという、リスク管理の教科書通りの方法です。
金融仲介の円滑化(金融包摂)による金融機関の健全性の確保という命題をクリアするには、後者(ワタシ)に軍配が上がるものと考えます。
ただ、このような正論だと、すくんで動かない地域金融機関が数多く、現にありますし、今後も出てくることが予想され、彼らを動かす(→条件変更やニューマネー供給)ためには、引当猶予の道を用意した方が良いのかもしれません。
まあ、いずれの方法を採るかは、金融機関の判断に任されているようですし、金融機関のふところ状態も違うので、ワタシがつべこべいう筋合いはありません。
どちらが正解か?
コロナ大恐慌のあとの「地域経済/社会と地域金融機関」の比較で検証されることになります。
コメント
各地域金融機関は今後、難しい判断を迫られると思われます。ただ、私自身は資産査定管理部門を長年経験した者から言わせますと、多胡先生が言われたことが本筋であると考えます。引当をきちんと積んでおくことにより、取引先や融資先と腰を据えて経営支援できるものです。つまり、経営支援即ち取引先が見事経営再建できれば、その貸倒引当金は戻入されるわけです。これから、各地域金融機関の手腕のみせどころです。