日経中国版に広島信用金庫と広島市信用組合のトップインタビューが掲載されています。
10年以上前のほぼ同時期、ワタシは広島市にあるこの2つの協同組織金融機関で支店長向けに話をしたことがあります。
ともに業界を代表する金融機関ですが、そのビジネスモデルは対照的でした。
広島信用金庫は当時、信用金庫業界における預かり資産業務の先進金庫でした。
ワタシの主義主張は、今も昔も「預かり資産業務よりも組織的継続的なリレバンを優先すべし」であり、同金庫でもオブラートに包むことなくストレートに話をしました。
「あなたの言う通りだ」、支店長たちの目はそう物語っていましたが、一部の役員や本部の人たちの中には険しい表情が見えました。
それに対し、広島市信用組合は当時から預金と融資という協同組織金融機関の本業に特化していました。
さて、
本日の両金融機関トップインタビュー記事に書かれた“コロナとの戦いぶり”は顧客に寄り添う納得感のあるものでしたが、とりわけ広島市信用組合の山本理事長の話は“我が意を得たり”のキーワードの連続でした。
~とにかく今はスピードが大事。これまで培ってきた顧客との接点の深さが生かされる局面だ
~影響が長引いて返済が遅れるようなら、また猶予に応じればいい。これまでの借入金も含めて、どう返せるかを顧客と一緒に考えるのが地域金融のあるべき姿だ
~地域に育ててもらった自己資本を、今こそ地域に還元しないといけない。とにかく倒産を出さず雇用を守るため、できる限りのリスクを取るつもりだ
~中小・零細のドクターとして、我々も苦難に対して一緒に立ち向かう覚悟を持たなければならない
~(公的金融に丸投げする姿勢も一部の金融機関でみられます、という質問に対し)地域金融の使命を果たせていないと思う。まずは決済口座を持つ地域金融が踏ん張らないといけないはずだ
(同記事より)
さらに、
本日の日経ビジネスオンライン(←日経トップリーダー)にも山本さんの記事があります。
「交渉相手ではなく相談相手」、
そのような関係ができているか、そのベースとなる信頼関係を作るための地道な努力を惜しまないか、地域金融機関で働くものとして常に自らに問いかけねばならないと改めて感じました。
~もし今、あなたの会社がコロナの影響で本当に困っていて、それが「カネ」の問題であるなら、金融機関の担当者と本気でぶつかり包み隠さず話すことをお勧めします。今が苦しくても、何としても続けたい事業があり、従業員を守り抜きたいというなら、それを私たちにとことんまで伝えてください。当面の見通しは赤字だったり債務超過だったりしても、事業への強い決意を見せられれば、それに応える金融機関はあるはずです。そのためには、まずは経営実態を具体的に示してください。その上で、従業員をどう処遇したいのか、事業をどう立て直していくのかを伝えてほしい。(同記事より)
コメント
まったくその通りです。顧客との関係性がこういう時にこそ顕著にあらわれます。事業者もどういう金融機関がいざという時に頼りがいがあるのか、コロナ禍で痛感されたはずですし、そうでなければ何のために我々は窮屈な思いをしているのか学びがありません。それが新常態です。感染症か災害か、或いは太陽風かは存じませんが、必ず戦後最大級、過去最悪のブラックスワンは飛来します。どういう暮らし、どういう食べ物、どういう消費、どういう仕事、どういう時間の使い方、どういう人生を選ぶのか。よくよく考えさせられることになります。
「不況期でも融資判断の基準は変えない」という姿勢に、広島市信組さんの平時においても企業に寄り添ったしっかりした活動をされていることがうかがえます。