金融庁のホームページにある氷見野長官の資本市場研究会・第121回時事懇談会「金融行政の課題と当面の対応」における講演要旨(2020年12 月14日)からの抜粋です。
https://www.fsa.go.jp/common/conference/danwa/20201214.pdf
~5年前ぐらいに、金融庁が、金融システムの安定と金融仲介機能の発揮の両立が大切だ、安定と成長が両方大事だ、と言い出した時には、「金融監督官は 金融システムの安定のことさえ考えていればいいのに、日本の金融庁はおかしい」みたいなことをいう人もいたのですが、数年したら、どの国の当局の人も 昔からそう考えていたかのような顔をして似たような演説をするようになっ た。コロナ後はましてやそうです。これは何も金融庁に先見性があったわけでも何でもなくて、かつての環境では健全性さえチェックしていれば健全性が確保できていたのが、そうでない環境に日本が最初に立ち向かわざるを得なくなった、ということだろうと思います。先日、ウォール・ストリート・ジャーナルに、世界は日本の地銀対策を注視すべきだ、今は他人事だと思っていても、明日は我が身だ、という、ちょっと皮肉な感じの記事が出ましたが、日本はいわば「非伝統的金融行政」を考えざるを得ないところに世界で最初に来てしまった、ということではないかと思います。(本文より)
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地域金融機関にはカネのみならず、地域屈指の人材や情報ネットワークを擁しており、それを地域経済の持続と健全な発展のために使わない手はありません。
こういう視点も踏まえリレバンの議論が始まってから18年、さらに言えば2015年からの地域金融・中小企業金融にかかわる金融庁の施策は銀行法一条「国民経済の健全な発展に資することを目的とする」に合致したものです。
たしかに地域における金融仲介機能の発揮(→「横軸」)あっての地域金融機関の健全性(すなわち金融システムの安定→「縦軸」)という思想で試行錯誤する中で、海外にモデルとなる先行事例はなかったと思います。
コロナ禍で「横軸」の重要性はますます高まっています。それも単に資金供給を行う金融仲介機能にとどまることなく、「資金繰り支援→本業支援→金融支援」(日下さんの講演より)によって地域経済・地域社会をしっかりと支えていかねばなりません。