金融機関の合併では「合併による余力をお客さまのために使う」というのが常套句になっています。
しかるに合併による「資本余力」のお客さまへの還元例は一握りしか見あたりません。
「人的余力」の方で一番有効なのは、増えた職員の一部を取引先に出向させて、お客様とともにウイズコロナ、ポストコロナでの新様式による事業変革の支援をすることだと思うのですが、そもそも金融機関の現場力が落ちているため、対応しきれる人間は決して多くなく、そういう気の利いた人間は合併金融機関の内部で活躍してもらいたいという判断(よく分かります)になり、なかなか進みません。
結局のところ「自分で新しい職場をさがせ」という突き放しパターンや、金融機関の優越的地位の濫用が見え隠れするような押しつけ出向による効率化(金融機関のコスト削減)で終わっていると言わざるを得ません。
ところが合併の目的を「労働集約型であるリレバンを進める上での財務基盤の強化と人員の増加」とし、合併発表の記者会見で、
「事業承継や新産業創出などの地域の課題解決に、合併で生まれる人的資源や強化される財務基盤を投入していく」(下記の日経記事)
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO36325970Q8A011C1L61000/
と強調した合併金融機関は着々と公約を実行しています。
本日9日の日経静岡版「浜松いわた信金、中小支援に専門職131人 現場と伴走」より抜粋します。
~浜松いわた信用金庫(浜松市)は4月、本部と営業店に中小企業支援の専門職員計131人を配置した。地盤とする静岡県西部の取引先の現場に入り込んで課題を把握し、課題解決に導く。資金繰りのほか、販路開拓やIT(情報技術)化などを幅広く提案。新型コロナウイルス禍を乗り切り、その後の成長も見据えた後押しをする。支援専門職員はビジネスパートナー(BP)と呼び、製造業を中心とした取引先約1600社へのコンサルティングを担う。エリアごとに1人当たり10~20社を担当。各店舗で総合的な業務を担っていた中堅・ベテランの人材を集めた。
~取引先に深く関わり経営課題の解決を図る「伴走型」支援に取り組む。支援内容は資金繰りをはじめ、経営改善や販路開拓、新規事業開発、事業承継など多岐にわたる。BPは企業の経営方針を決める会議に同席したり、現場で商品開発に携わったりする。2020年10月以降に研修を重ね、業種別の専門知識や財務分析力などを高めた。配置に先立ち、中小企業診断士やファイナンシャルプランナーなどの資格を取得したBPも多い。
~鈴木敏治常務理事は「浜松いわた信金の本気度を見せたい」と意気込む。新型コロナの感染が拡大した20年4月以降、地域企業への融資に最優先で取り組んだ。製造などの事業が回復しつつある今、資金面だけでなく経営に関わる幅広い課題が顕在化している。「取引先が返済資金を捻出できる状態まで本業を回復させる意味合いもある」(鈴木常務理事)
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浜松いわた信用金庫の資本余力の地元への還元の一例はこちらです。
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOFB02CJP0S1A300C2000000/
身内を褒めて恐縮ですが、合併のあるべき姿を体現している金融機関です。