地域金融の競争政策 (前編)

巷間伝えられるところによれば、ふくおかフィナンシャルグループ(FFG)と十八銀行による経営統合に関する、公正取引委員会の企業アンケート調査は集計段階に入っているとのことです。果たしてどのような分析結果になるのでしょうか。

さて、地域銀行の競争政策を考える場合、県単位でくくるのは実態にそぐわず、隣県まで広げるべきという意見があります。

長崎県だけでなく、たとえば隣の佐賀県まで広げて、その中でのシェアはどうか、さらには人の移動、商圏も加味して福岡まで含めて九州北部でのシェアで見たらどうかという考えかと思います。

私も県単位でくくった競争政策は実態に合わないと思っています。

ただ、隣県まで広げるべきという意見ではありません。

私の意見は次の通りです。

どこの地区にも優良企業層があり、この層は県内金融機関はもとより、隣県金融機関、それどころかメガバンクからであっても借りることができます。

全国区企業ですので、県という枠からは外すべきでしょう。隣県も入れてシェアを計算するのもまったく意味がありません。

長崎においても、こういう企業は十八親和の合併話が出て以来、一行取引となることを避けるべく、九州の他県地銀 (メガも含む) との新規取引を進めていると言われています。私の知り合いの企業もそうです。

それに対し、長崎県内のミドルリスク層以下は十八/親和から排除されたら、行くところはありません。

当然ながら、隣県の金融機関からは全く相手にされません。隣県からわざわざ長崎に出向いてミドルリスク層と商売を積極的にやろうとする金融機関があるでしょうか。(目の飛び出るような高金利のノンバンクを除けば)

十八/親和から排除された中小零細企業や個人事業主は信用金庫・信用組合が受け皿となると考えたいところですが、長崎県は信金信組で対応できるエリアは多くはありません。信金信組の稀薄地帯・空白地帯が多いのです。

それに対し、新潟県の場合には県内のエリアごとに信用金庫、信用組合があり、合併地銀に排除されても受け皿となりうると考えられます。

長崎と新潟はある意味、両極端と言えるでしょう。信金信組の数が減少する中で (身の丈に合わない不動産投資や有価証券運用の失敗によるものが多い) 、長崎型の県は多くなっています。

新潟型に近いのは長野県、静岡県であり、たとえば、長野県は諏訪、飯田、松本、上田といったように旧藩ごとに信用金庫が存在します。

越後 (新潟県) は大国であり江戸幕府は小藩分立の政策をとりました。豊後や美濃もそうですが、一般的に小藩分立の地域は信金信組の数が多かったように思います。(統合により激減した県もある)

県のくくりは明治以降のものです。

「藩単位で競争環境を見ていくべきである」(有識者会議でのTさんの言葉)

というのは全国区企業を除外した上での、本質的な競争政策の議論を行う際には非常に的を得ているものと考えます。

いずれにしてもミドルリスク層の競争環境を見る場合、県単位でくくることは広すぎて問題ありですね。


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コメント

  1. 楢山 敬 より:

     「藩単位で競争環境を見ていく。」なるほど・・・面白いですね!確かに県単位の線引きだけで説明のつかない経済活動もあるように見聞きしております!

     昨今、県単位でわりきれるのは・・・国体と高校野球でしょうか?(高校野球も生粋の県出身選手ばかりでチーム編成されていないかもしれませんが・・・)

  2. 旅芸人 より:

    国体もジプシー選手がいたりしますからね。