6年前に「異端児と社外取締役」という小文を書きました。
まずは全文をご高覧ください。
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リレバンが始まって 12年余り経過しました。この間、全国の地域金融機関を回り、リレバン活動を先頭に立って推進している多くの人たちと接点を持ちました。皆さんとても魅力的でした。だからこそ、彼らリレバンの担い手たちはお客様からの支持も絶大だったものと推察されます。
そのリレバン担い手の 1人、数年前に地域金融機関を辞職し、地元県庁にヘッドハントされて、地域活性化の仕事で活躍している Xさんと昨日電話で話をしました。
リレバン担い手の多くは金融機関の内部では異端児扱いを受けていましたが、Xさんはその最たる例でした。常に新しいことにチャレンジして新分野で実績を残していた Xさんですが、上級管理職になってからは居心地が悪くなっていたように感じました。
グローバル的な視点も含め、厳しい競争原理にさらされているメガバンクと比較すると、地域金融機関は緊張感の弱い組織体です。良く言えばアットホーム、悪く言えばぬるま湯体質であり、異端児が削ぎ落とされ純化した経営陣となりがちです。
トップの権限が強く、経営の意思決定が一方向に傾きやすいというのも特徴です。このような経営体質の場合には異分子による牽制機能は非常に重要です。これが社外取締役の業務執行に対する監督機能だと思います。さらに攻めのガバナンスという視点に立てば、競争原理や、グローバルな観点も加味した企業価値向上のためのモニタリングも社外取締役には求められます。地域金融機関の村社会に化学反応を起こさせるための「触媒」 (アクセル役)といっても良いでしょう。
異端児 (凡人の経営者からの視点ですが) が除去されて純化したお友達クラブにならないように業務執行を牽制し監督していくことは社外取締役の重要なミッションだとつくづく感じています。異端児たちが残っていてくれたら、社外取締役が触媒となって、引き起こされる化学反応はより大きなものになるのだろうにと、つくづく残念に思う今日この頃です。
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6年が経過しました。
地域銀行の社外取締役の存在感は着実に高まっています。
外部専門人材の活躍は目立ってきているものの、経営陣や本部中枢に「異端児」がいるか、という点についていえば、まだまだ十分とはいえません。
コメント
これ、本当にその通りです。なぜか。異端児は組織外に独自のネットワークを持っているからです。そのネットワークから「組織では発掘しえない知性」を獲得してくるから異端児が必要なのです。みずほ問題は、「旧行対立の克服」という錦の御旗のもと、異能・異端児をすべて放出し、ONE-MIZUHOに染め上げたところに最大の落とし穴があったと思います。みずほのシステムはHD直轄。BKはことごとくHDの重要会議から締め出されている。しかし、いざ障害が発生した時、記者会見に引っ張り出され、責任を問われるのは子会社銀行・・・ガバナンスというのも実にいい加減なもんです。いつの間にか、社外取もCEOの望む面子に・・・社内取にも社外取にも異能・異端児は必ず残さないと、新たな知性を獲得できず、時代に適応できなくなります。