5日の日経電子版です。
「政局、金融界に影響は? 地銀再編・みずほなど課題残る」
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB036ZH0T00C21A9000000/
記事の中にこういう文言があります。
〜再編の機運が弱まるとは考えにくいが、地銀からは「地域の中小・零細企業にコロナ融資が行き届いたのは『地銀が多すぎた』から」(九州のある地銀幹部)との声も漏れる。
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九州で中小零細企業に地銀がコロナ融資を行き届かせたのは間違いないのですが、その背景には九州の信用金庫、信用組合のネットワークが他地域に比して弱いことがあります。
小規模零細企業にまでもゼロゼロ融資をばら撒く(記事では「行き届いた」)だけなら地方銀行でも可能ですが、それだけでは不十分です。
旅芸人ブログで常に指摘している通り、ゼロゼロ融資は借り手のウイズコロナ・ポストコロナに対応する経営改善や事業変革の支援(「本業支援」=本丸)を遂行するための“時間稼ぎ”の手段に過ぎません。
地方銀行が本丸である本業支援を、小規模零細事業者にまで万遍なく組織的継続的に行うことは、その有り様からしてそもそも限界があります。
小規模零細事業者との取引に高い適合性をもつ協同組織金融機関の存在が重要となってきます。
今年初、地方銀行2行が合併した新潟県には9つの信用金庫と8つの信用組合があります。
一方、昨年10月、2つの地方銀行が合併した長崎県には唯1つの信用金庫と2つの地域信用組合しかありません。
また、今後の地方銀行の合併が決まっている青森県の協同組織金融機関は2つの信用金庫と1つの信用組合だけです。
繰り返しになりますが、
ゼロゼロなどのコロナ融資の実行状況を見る限り、コロナ禍の地域金融は全国で機能しています。
でもこれは時間稼ぎが全国的に行われたということ。
時間稼ぎのコロナ融資や補助金の効力が時の経過とともに落ち、経営改善/事業変革/事業再生の支援やそれに伴う金融面でのサポートという本丸ステージとなると、「地域格差」の顕在化が大きな懸念材料です。
冒頭の日経電子版記事、九州地銀幹部のお気楽な我田引水コメントには“薄っぺらさ”以上のものを感じることができません。
地域金融機関、さらには信用保証協会などの支援機関が連携するコロナ対応の地域金融エコシステムの重要性は政局に関わらず不変です。
都道府県別にしっかりと検証する必要があります。
コメント
地域によっては地銀再編、デジタルバンク化も選択肢でしょうが、別途、協働組織金融を張り巡らして、経済合理性だけでは、カバーしきれない地域、事業者への継続的リレバンが自走できるようにしていただきたいですね。そもそも協働組織から徴収する法人税は「雀の涙」ですので、いっそ、こうした協働組織金融の税率をさらに引き下げ(法人税ゼロでも良いのでは?)、その非営利性をもって、非経済性を乗り切っていただきたいです。最終的な税支出も含めた広義で考えれば、この方が遥かに合理的だと思います。人類が協働組織を発明した起源は、低所得者が牛乳や卵、野菜を食べられない、成長ではなく生きていくための生業(なりわい)を続けられない、という非経済性を克服するための英知であったはずです。協働組織は時代遅れの古くさいものだと思われてきましたが、一周か二週遅れで、今日の「持続可能な地域社会」を可能たらしめる最先端に位置付けられているのです。品川弥二郎、平田東助らの先見性の方が、数合わせの地銀再編なんぞより、遥かに国家観としての重みがあると思います。
橋本様
信用組合は税制的に優遇されているという負担感が組合経営者にはあると思うのですが。
更に税制を優遇するというアイデアは、信用組合経営者が弱者救済という本来使命を再認識し信用組合運動を積極的に展開する切っ掛けに、そして個々の単位組合が「信用組合」という旗印のもと結束団結し、また地域住民事業者に信用組合の目的を理解してもらう良い策かもしれません。