”ものがたり”が欲しい

どうも「おくのほそ道」に今月は縁があります。

芭蕉が日本海側を南下して、途中、長逗留したのが、山中温泉です。この地で同行していた曾良と別れます。

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  小松空港から車で45分。夕刻に山中温泉に入ってきました。加賀温泉郷の中でも一番奥まったところに所在しており、まさに関西の奥座敷と言われるのがよくわかります。

  この地域は、加賀温泉郷という一括りでとらえる傾向が強いのですが、かつての団体客中心のパターンから脱して、それぞれの個性を活かしたコンセプトの発信が必要ですね。とくに山中温泉は地勢的に十分に個性を出せるし、すでにそれを実行していると感じました。

  そこには本気度100%のリーダーがおられます。

  山中温泉の「かよう亭」さんの御主人は何と昭和50年代のはじめに、大型旅館だったものを部屋数わずか10室、深山幽谷たる自然景観と融合し、すべてにこだわったおもてなし旅館へと変身させました。いまでこそ主流といわれるコンセプトですが、当時は団体旅行の隆盛期、パイオニアのご苦労は、いかばかりか。

  温泉にばかり目が行きますが、同じ加賀市にある橋立港も魅力があります。橋立は北前船の中継地で越前の三国と並び、かつては大いに栄えたと言います。北前船の港町にはハード、ソフトの両面で様々な蓄積があり、掘りおこしがいがあります。

  いまは漁港。ここで水揚げされるカニや甘えびは甘みがあると地元の人々は自慢しますが、それだけで留まるのはもったいない。

  蓮如さんの「吉崎御坊」も実は近いのです。また九谷焼きの名前の由来の「九谷」の集落も山中から車で一走り。

  これらをうまく繋ぎ合わせて、一つの物語を作って行くことが課題ではないかと考えた次第。私の地元の島根県石見銀山が、世界遺産登録にたどり着けたのは、物語づくりが非常に優れていたことにあります。

  新幹線の金沢延長を控え、盛り上がりを見せる加賀・能登ですが、さらなる工夫で、面白い展開に持っていけそうに思います。

  以上、山中の長寿の湯につかりながら、つらつらと頭に浮かんだことです。

「山中や 菊は手折らじ 湯の匂ひ」 (松尾芭蕉)

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コメント

  1. ARCadia より:

    Lady Kagaが思い浮かんでしまったよ。われながら凡庸だよなあ。

    でもあれは出色のプロモーションですよ。

    それにしても関東では加賀温泉郷の知名度はイマイチですなあ。新幹線開通「前」に一度行かねば。

  2. 芸のない旅芸人 より:

    ARCadiaさん

    山中温泉はとても良いですよ。お母上と一緒にどうぞ。