もう10年近く前になりますが、某有名出版社から「地方出張の達人」(仮題)という本を書いてみないかという引き合いをいただきました。
それまでも10冊余りの本を上梓していたものの、いずれもデリバティブや地域金融の専門書であるため、躊躇したのですが、「やわらかい話もたまには面白いかな」という気になり、お言葉に甘え、企画案を提出しました。
要すれば地方出張をするにあたり、どのような準備をするのか、地域の人たちとどのような話をするのか、どういう話題が地域の方々の心を打つのか、といったことをざっくばらんに書いてみようというものでした。
実際に地方に行く場合、まずは当該地区の地図を眺めてイメージ作りを行います。
そして、当該地域の歴史を簡単におさらいします。高校の歴史教科書で有名な山川出版社の「県史」が役に立ちます。初めての地の場合には、この作業を入念に行います。最近は初めて訪れる場所は皆無といっていい状況なので、気になるところを確認する程度ですが。
一番ありがたいのは先人の訪問記です。訪問先が司馬遼太郎さんの「街道をゆく」シリーズの中にあるような場合、当該個所を必ず読み返します。
「街道をゆく」は週刊朝日の連載時から愛読していました。
その「街道をゆく」の最後の担当番記者として司馬さんと同行しておられたMさんには、東京駅のキオスクや空港の書店や売店の旅行ガイドブックのコーナーに「街道をゆく」を地域別にして置いたらどうか、などと提言したこともあります。
カジュアルなネタとしては、高校野球の強いチーム(とくに旧制中学系の高校が強い地域だと盛り上がる)の過去の甲子園での実績や、地元出身の女優、アイドル歌手。
仕入先は移動中に読むスポーツ新聞や、地方出身の知り合いからの情報です。こういうネタは結構、覚えているもので、なぜか頭の中がデータベースになっているようです。
そういえば、かつては私のことを「歩く○○」(○○は某芸能系の週刊誌です)と呼ぶ人もいました。
冒頭の「地方出張の達人」の話に戻ります。
企画書には上記のことを入念に書き綴ったのですが、あっけなくボツになりました。
編集会議でボロクソだったそうです。「こんなのオタク本じゃないか」だって。
コメント
そんなことまでやってるとは知らなんだ。
旅芸人氏と旅でご一緒することがありますが(もちろん仕事じゃありませんよ)、タクシーに乗ったりすると、いきなり運転手さんと話を始めます。感触がいいとドンドン膨らませます。歴史の話、地域の話、企業、名産、名店、名家、、、そうやって手早く生きた情報を集めるようです。
氏と知り合ったン十年前に、すでに氏の歴史と地理に関する知識は群を抜いていましたし、その上にこのアリサマですから、他の追随を許さないというか、盤石ですね。それに、好きじゃないと続きませんね、やはりオタクっぽいね…
ARCadiaさん
過分なコメント、恐縮です。
地方は深いですよ。知れば知るほど。
東京から十把一絡げに地方を語る人には腹が立ちますよ。
いやあ、ご立派。私が知る限りでは、オタク度という意味ではここ数年メディアへの露出度が多い藻谷某もすごかったですけどね。この人は若い頃から日本の全市町村の風景をひとつ残らず頭に入れようと行者のように自分に課して歩いてきています。その蓄積がずっと後の今頃になって花開いているようです。
Kochan1026 さま
過分なお言葉をいただきまして、恐縮しております。近いうちに三朝方面にお供させてください。よろしくお願い申し上げます。